1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方は、通常、相手方の保険会社と示談交渉を行います。しかし、相手方の保険会社の提示する金額に納得ができない場合には、訴訟によって解決を図ることになります。
どこの裁判所で行うことになるのかという問題については、前回のコラムで記載しましたので、
今回は、裁判が実際にどのように進んでいくのかということをお伝え致します。
地方裁判所と簡易裁判所で大きく違いはありませんが、主として地方裁判所の進め方を前提にしています。
2 流れ
(1)訴状
まず最初に、裁判所に訴状を提出します。
訴状には、事故の状況、入通院経過、症状、損害等をまとめて整理したものを記載します。
その際に、特に事故態様については、
・車両の損傷状況の写真
・事故現場の写真や動画
・これらを図面にしたもの
を提出するのが、裁判を早く進めるために望ましいです。
刑事事件になっていれば、警察の作成した実況見分調書を取り付けて提出するという方法をとるのが一般的です。
そうでない場合には、原告側で現場に行って撮影したりして、図面に起こします。
後遺障害について争いがある場合(原告になる交通事故の被害者方の方で、自賠責等が認定した後遺障害結果に不服がある場合)には、その根拠となる資料を早めに準備し、訴状に盛り込めると審理の早期化に資すると言えます。
裁判所に訴状を提出すると、概ね1か月から1か月半後に、第1回口頭弁論期日が指定されます。
(2)答弁書
第1回口頭弁論期日までに、被告側が答弁書を提出します。だた、被告側は一方的に訴えられる関係にありますので、第1回口頭弁論期日は出席せずに、第2回期日までに反論するという形で、簡単な答弁書を提出することも認められています。
第2回期日以降も、概ね1か月から1か月半に1回くらいのペースで裁判は進んで行きます。
(3)準備書面での整理
その後は、準備書面の提出という形で、争点についてお互いの主張立証を尽くしていきます。
訴訟に発展する交通事故事案の争点としては、
・事故態様と過失割合
・後遺障害の程度
・損害
について、争点になることが多いです。
訴訟の開始から半年から1年くらいで、争点整理が終わります。
(事案によっては、もっと早く整理ができる事案もありますし、2年以上争点整理に時間を要する事案もあります)
(4)和解勧試
争点整理が終わると、裁判所から暫定的な心証に基づいて和解案が示されることが多いです。
この段階で、お互いが納得すれば、和解によって裁判は終了します。
和解の席には、当事者ご本人の方が出席する義務はありませんが、事案によっては、裁判所から出廷を求められることもあります。
往々にして、原告の主張の全てが裁判所の心証によれば認められない事案で、求められることが多い印象です。
(5)本人尋問・証人尋問
前述の和解ができないと、本人尋問・証人尋問の手続きになり、裁判所に出廷して直接お話を伺うことになります。
これには、事前の準備等もあり、交通事故の被害に遭われた方が当事者として手続きに関与する中では、一番濃い関与の仕方になると思います。
(6)判決
以上の尋問手続が終了すると、裁判所から改めて和解勧試がある場合もあり、それで話し合いがつけば裁判は終了となります。
しかし、話し合いが付かないと、判決言い渡しになります。
(7)控訴・上告
1審の判決に不服があれば控訴、高等裁判所の判断に不服があれば上告ができます。
3 まとめ
以上のように、裁判の流れをお伝え致しました。
以下は、あくまで当事務所の感覚です。
事件の終わり方としては、和解による終了がほとんどで、判決に至るケースは、全体から見ると稀です。
ただ、判決に進んだケースのほとんどは、和解で解決ができなかった事案になりますので、控訴に至っている印象です。
時間的には、和解できる事案については、訴訟提起から6~12カ月以内(10カ月くらいが一番多い?)での解決が多いのではないでしょうか。その場合には、交通事故の被害者の方ご本人は、1度も裁判所に出向かなくて済んだというケースが多いと思います。
あくまで当事務所の感覚になりますが、参考にされてください。
交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所までご相談ください。