Archive for the ‘物損事故’ Category

新車特約(車両新価特約)

2024-03-01

1 はじめに(新車特約 車両新価特約)

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償金を獲得するために努めるのが一般的です。

物損事故については、これまでたくさんの投稿をしていますが、今回は新車特約について記載します。

2 新車特約(車両新価特約)とは

新車特約(車両新価特約)は、事故で車が全損または半損になった場合に、新車の購入費用を補償してくれる特約です。

一般に事故によって物損が生じた場合には、車両保険という商品があります。

しかし、車両保険だけですと、新車で購入した車であっても時間が経つほど車両価値が落ちていくため、事故で全損してしまった場合、車を買い直そうと思うと、差額は自分で用意しなければなりません。修理する時も同じで、修理費が車両価値を上回ってしまうこともあります。その場合には、手出しが発生します。

新車特約を付けておけば、車両保険の補償額に上乗せして新車の購入費用を受け取ることが可能です

3 新車特約(車両新価特約)を使える場合

新車特約が使えるのは大きく以下の2つの場合になります。

①車が全損になった場合

②修理費が新車価格相当額の50%以上となった場合で、かつ、車体の本質的構造部分に著しい損害が生じている場合

ただし、この保険使った場合には、3等級下がることになりますので、保険料が高くなります。

とはいえ、この保険を利用できた方が経済的にはメリットはあると思います。

4 まとめ

以上のとおり、物損事故の商品も幅広いものがあります。弁護士も、これから保険に加入する方も、保険の知識を身に着ける必要があります。

交通事故の被害に遭った場合には、ご自身がどのような保険商品に加入しているかをしっかりと把握することが肝要です。

交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所までご相談ください。

自損自弁について

2023-06-15

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。

しかし、事故によって生じた損害の内容によっては、自損自弁として処理した方がよい場合もあります。

2 自損自弁

自損自弁とは、交通事故の当事者が双方とも保険を適用せず、自分に発生した損害を自分で負担する解決方法です。

お互いの損害発生額が少額な場合や、自分に発生した損害額と保険を適用した場合の自己負担額が同程度になる場合には自損自弁にすると簡便に解決できます。

たとえば事故によって発生した損害額(車の修理費用)が、相手の分が10万円、こちらの分が5万円だったとします。

このようなケースにおいて、互いに過失割合を計算して対物賠償責任保険を適用して賠償金の払い合いをするのは煩雑です。対物賠償責任保険を使うと、以後、保険料が高くなりますので、経済的な点からも、あえて保険を使わない方が得の場合もあります。

また、過失相殺に争いがあるような場合には、そこで争って紛争解決が長引く可能性もあります。

したがって、お互いの損害が大きくない場合には、自損自弁での解決を検討する意味があります。

ただし、保険を利用した方が得な場合には、保険を利用すべきです。

したがって、自損自弁が得なのかどうか、保険会社に確認した上で、最終的な結論を出すべきです。

3 まとめ

以前から投稿していますが、物損事故は、人損に比べると必ずしも金額が大きく無いケースが多いですが、かといって、簡単に示談できるわけではありません。

自損自弁は、ある意味では過失相殺等の問題を棚上げして解決を目指す点で、少し今まで投稿してきた内容とは視点の異なる解決方法です。

ただ、メリットのある場合もありますので、検討すべき問題であることも事実です。

交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

経済的全損について②

2023-05-25

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。

物損事故に遭い、相手方に、車両の修理費を請求する際に、経済的全損が問題になることがあります。

本サイトでも、以下の投稿をしています。

2 対物超過特約

任意保険会社の商品で、対物超過特約というものがあります

相手方の自動車に時価額を超える修理費用が発生した場合に、差額を補償する自動車保険の特約の一つです。

これまでもお伝えしている通り、物損事故の場合には、過失割合と修理費用が問題となることが多く、特に、経済的全損の事案の場合には、車両時価額や買替諸費用を巡って保険会社と対立することが多いです。

被害者の側からすれば、事故を起こされた上に、手出しで修理費用や買い替え費用を出さなければならないということになり、不満の残る形になりがちです。

この場合に、加害者側がこの特約に入っていると、円滑に解決できる可能性が高まります。

相手方がこの特約に加入していないか、あるいは、自分が事故を起こしてしまった場合に、この特約を使うことができないか、確認されてみてください。

3 まとめ

以前から投稿していますが、物損事故は、人損に比べると必ずしも金額が大きく無いケースが多いですが、かといって、簡単に示談できるわけではありません。

経済的全損は、過失割合と並んで問題になることが多い争点です。

交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

経済的全損について

2023-04-11

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。

物損事故に遭い、相手方に、車両の修理費を請求する際に、経済的全損が問題になることがあります。

2 経済的全損とは

経済的全損とは、修理費用が車の時価額を上回った場合をいいます。

経済的全損と評価されるときの、物損の損害額の計算方法は次のとおりです。

(計算式)

損害額=車両の時価相当額①+買い替え諸費用②

①車両の時価相当額

裁判例では、「自動車の事故当時における取引価格は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するに要する価額によって定めるべき」と示されています。

時価相当額の算定当たって参照される資料として、いわゆる「レッドブック」(有限会社オートガイド「オートガイド自動車価格月報」)が広く用いられています。その他、インターネットの中古車販売サイトの取引事例、オークションの販売情報、中古車専門誌上の取引情報などを参考にして算出することもあります。

これらの資料をもとに、同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離といった情報をもとに検索し、その平均値などを参考にして評価します。

感覚的なお話になりますが、保険会社は、レッドブックを参考にしていることが多く、中古車販売サイト等の方が高額で算出されているという事案も多く見受けられます。

保険会社が経済的全損と主張して、車両時価額の資料を送付してきても、よく確認することが重要です。

②買い替え諸費用

経済的全損のときには、同種・同等の車両を再取得するためのすべての費用が損害となるため、買い替えにかかる諸費用もまた加害者に請求できます。

買い替え諸費用には、次のものが含まれます。

・登録、車庫証明、廃車の法定の手数料相当額

・登録、車庫証明、廃車等の代行手数料相当額

・自動車取得税

・車両本体価格に対する消費税相当額(買い替え費用ではなく、自動車本体の「時価額」に含まれると整理する考えもあります。)

・事故車両の自動車重量税未経過分(使用済自動車の再資源化等に関する法律)により適正に解体され、永久抹消登録されて還付された分を除く)

※ 事故車両にかかる自動車税、自賠責保険料については、いずれも未経過分について還付制度がありますので、損害として認められません。ただし、軽自動車の自動車税は還付されません。

買い替え諸費用の賠償が認められるのは、時価相当額だけ賠償されても車両を再取得できるわけではなく、これらの諸費用の賠償なくしては十分な被害回復ができないからです。

買い替え諸費用はディーラーから見積もりを取得することで算出できます。

ただ、保険会社によっては、買い替え諸費用は、保険会社同士のやりとりではお互い請求しないものである等という趣旨不明な主張を行ってきたこともあり、負担を避けようとするのも事実です。

裁判例で認められている類のものは、そのように強く主張して交渉することが必要です。

3 まとめ

以前から投稿していますが、物損事故は、人損に比べると必ずしも金額が大きく無いケースが多いですが、かといって、簡単に示談できるわけではありません。

経済的全損は、過失割合と並んで問題になることが多い争点です。

交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

物損事故に関する評価損について

2023-03-20

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた場合、相手方の保険会社と示談交渉することになると思います。

本日は、物損についてお話をします。

物損では、修理費用の請求するのが典型的ですが、これは、相手方の保険会社と修理工場が協定を結んで修理費用について争いの無いように進めることが多く、この場合には、修理費用の額そのものが争いになることは少ないと思います。

では、自身の車両が新車であり、修理をしたとしても車の価値が下がってしまうといった事情はどう評価されるのでしょうか。

2 評価損とは

交通事故を原因として車が事故車となってしまったことにより、その車の価値が下がってしまうことを「評価損」といいます(「格落ち損」ということもあります)。

車の評価損には、大きく分けて以下の2種類があります。

①技術上の評価損

②取引上の評価損

①技術上の評価損とは、交通事故によって車の性能・機能に修理不可能な損傷が生じることによって価値が下落することをいいます。

②一方、取引上の評価損とは、車の性能や機能が損なわれたかどうかとは関係なく、(仮に完璧に修理されていたとしても)車の買い手は事故車を欲しがらないという中古車市場の傾向のために、事故車の価値が下がってしまうことをいいます。

3 認められるか

評価損は、そもそも評価損を認めるかどうか、認めるとしていくらか、などを算定することが難しく、簡単には行きません。

車の査定を行う第三者機関としては、「一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)」がよく知られています。

交通事故により車の価値が下がってしまった場合には、日本自動車査定協会に申請を行うことにより、査定の上で「事故減価額証明書」を発行してもらうことができます。

事故減価額証明書は、保険会社との交渉や損害賠償請求訴訟などの際に証拠として利用することが可能です。

ただ、これが裁判所を拘束するかというと、そうではなく、裁判所は、その他の証拠等を踏まえて判断を下すことができます。

ただ、実務的には、まず、事故減価額証明書を取り付けてもらい、保険会社と交渉で解決ということが多いと思います。

当事務所でも、最近、ご依頼をいただいた案件で、事故減価額証明書の全額では無かったですが、修理費の10%を評価損として認めるということで、訴訟外で示談したケースもあります。

4 まとめ

物損事故は、人損に比べると必ずしも金額が大きく無いケースが多いですが、かといって、簡単に示談できるわけではありません。

今回の記事で問題になっている評価損や、経済的全損の場合、レンタカー代等は損害がどの程度認められるかが問題となることが多く、過失相殺も互いに一歩も譲らず裁判になるということも多いです。

交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

物損事故について

2022-08-04

物損事故は、人身事故に比べると、損害額は低いですが、実は訴訟になる可能性は同じくらいあります。物損事故で主に問題になるのは、①修理費、②過失相殺です。

1 ①修理費について

修理費は、加害者側の保険会社のアジャスター(交通事故が起きた際、保険会社から委託を受けて自動車の損傷状態を調査し、損害額の認定を行う専門家)と、被害者が車両を持ち込んだ工場とで協定というものを交わして進めますので、修理費自体で揉めるケースは必ずしも多くはありません(衝突部位から言って、ここまで故障するはずはないといった形で争いになるケースが無い訳ではありませんが)。

修理費は協定で決まったとしても、経済的全損(修理はできるけれども修理費用が車の時価額を上回った場合)に当たると、保険会社は修理費の全てを賠償はしてくれません。この場合、損害額=車両の時価相当額+買い替え諸費用ということになります。

車両の時価相当額については、レッドブックと言われる本を参考にしたり、中古車市場で実際に売却に出ているものを参考にしたり、様々検討するのですが、簡単には合意に至れないことが多いです。

また、買替諸費用(登録費用、消費税等といった買い替えの際の経費です)について、示談交渉の段階では一切支払わないと言ってくる保険会社もあり、そのような保険会社の対応に不満を抱き、結局は裁判を選択するということがあります。

2 ②過失相殺について

②過失相殺については、人身事故以上に争いになることが多い印象があります。

人身事故の場合、以前コラムで記載した人身傷害補償保険が普及しているということもあり、裁判すれば、過失割合がどうなっても被害者が回収できる金額は変わらないという状況になっていますので、ある程度、被害者側も感情的にならずに解決できる途があります。

しかし、物損はそうは行きません。過失割合如何で、どちらが悪かったからという白黒をつけることになるため、追突といった0対100であることが明白な事故でない限り、簡単には合意に至らないことがままあります。ドライブレコーダーが無いケースでは、客観的な資料が乏しい場合も多く、その場合は困難事案となります。

特に、私ども弁護士の立場で疑問に思う保険会社の対応があります。例えば、加害者側が法人契約の保険で、従業員が仕事中に起こした事故であった場合や、保険代理人店経由で保険会社が事故の情報を収集している場合、示談交渉を行う加害者側保険会社の担当者は、運転者本人から事故情報の聴き取りをしていないことがあります(このようなケースは少なくない印象です)。そのため、事故直後に被害者と加害者が事故状況について確認した共通認識や、交わした会話が無視されたりして、被害者側が感情的になってしまうこともあります。事故の後、保険会社から連絡をもらい、事故直後の加害者側の主張が大きく変遷した件もあります。

このような保険会社の対応は改められるべきですが(少なくとも、弁護士であれば、依頼者本人から直接の事情の確認は必ず行います。保険会社が加害者側の代理人として対応するのであれば、担当者が運転者本人から事情を確認することは、当たり前に行われるべきことです)、このような対応をされた結果、感情的対立から裁判に至るということもままあります。

3 その他

上記では、①修理費(経済的全損を含む)、②過失割合について見てきましたが、他にもレンタカー代・代車使用料で揉めることもあります。

保険会社によっては、双方過失があるケースの場合には負担しないという主張をしてきたり、実際に修理していなければ負担しないといった主張をしてくることがあります。

前者は全く理屈が通らないです。レンタカーを使用する必要があるのであれば、過失割合に従って負担すべきは当然です。

後者についても、そもそも実際に損傷しているのであれば、修理をしなくても修理代は損害として発生していますし、修理をすることが義務ではない以上、その検討のために要した期間のレンタカー代は負担すべきです(同趣旨の裁判例もあります)。

他にも、代車を使用する期間が長期間だという主張がなされたりすることもあります。代車の使用期間については、裁判例も明確な基準が無いため判断に迷うケースもあります。

最近では、いきなり保険会社側が弁護士を立てて、一方的に期限を定め、そのときまでに代車を返さないと、以降は保険会社が負担しないという文書を送りつけられたというケースがありました。このような対応をされれば、被害者側としては頭に来ると思います。冷静な話し合いをする土俵を保険会社の側が崩していると言わざるを得ません。

4 最後に

長々と物損事故について記載しましたが、ある意味では人身事故の場合よりも保険会社の対応に不満を持たれる方も多く、裁判になる可能性は人身事故に比べても決して低いものではありません。

物損事故に遭われて対応に困っている方は、ぜひ、上山法律事務所にご相談ください。

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