後遺症の損害賠償の相場を知りたい方

1 はじめに

交通事故で怪我をして治療を受け、症状固定した時点でも完治しなかったら「後遺症」が残ったということです。その場合、自賠責で「後遺障害」認定を受けることにより、症状の内容や程度に応じた賠償金を受け取れます。

後遺症が認定されたケースの場合、傷害部分と言われる損害項目と、後遺症が残った場合に特有の損害項目を計算することになります。

傷害部分とは、交通事故日から症状固定日までの傷害による損害(治療費・通院交通費・休業損害・入通院慰謝料・文書料など)のことをいいます。後遺症が認定されない事案も含めて、全ての人身事故で問題となる損害項目です。

後遺症が認定されたケース特有の損害項目は、後遺傷害慰謝料及び逸失利益です。

後遺障害には14段階の等級があり、それぞれの等級に応じて慰謝料や逸失利益が支払われます。

2 後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことによって受ける精神的苦痛に対する慰謝料です。

14の等級ごとの後遺障害慰謝料は以下の通りです。

1級

2800万円

2級

2370万円

3級

1990万円

4級

1670万円

5級

1400万円

6級

1180万円

7級

1000万円

8級

830万円

9級

690万円

10級

550万円

11級

420万円

12級

290万円

13級

180万円

14級

110万円



3 逸失利益

逸失利益は事故前に働いていた人や主婦、子どもや学生に認められる損害です。後遺症によって労働能力が失われ、将来得られたはずの収入を得られなくなるので、その減収分を請求できます。

有職者の場合、症状固定までは「休業損害」として減収分の支払いを受けますが、症状固定後は「逸失利益」として後遺症によって失った将来の減収分を一括でまとめて受け取る。

逸失利益の具体的な金額は、被害者の職業や年齢、性別などによって変わってきますが等級が高いほど高額になります。

計算式は次の通りです。

「一年あたりの基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」

 

(一年あたりの基礎収入)

  1. サラリーマンなどの給与所得者
    給与明細や源泉徴収票が基準となります。本給だけではなく、手当てや賞与も含まれます。
  2. 自営業者・個人事業主
    確定申告書が基準となります。収入が確定申告書と異なる場合は、領収書や帳簿などで証明する必要があります。
  3. 家事従事者(主婦・主夫)
    厚生労働省で毎年発表している賃金センサスの女子労働者の全年齢平均賃金が基準となります。
    兼業でパートタイマーや内職をしている方の場合、実収入と賃金センサスによる女子労働者の全年齢平均賃金の、いずれか高い方が基準となります。
  4. 幼児・未就労の学生、失業者
    賃金センサスによる男女別全年齢平均賃金額が基準となります。


(労働能力喪失率)

労働能力喪失率とは、後遺障害によって労働する能力がどの程度下がったかを数値化したものです。後遺障害等級ごとに以下のように決まっています。等級が重くなるほど労働能力喪失率は高くなり、逸失利益も高額になります。

後遺障害等級

労働能力喪失率

第1級

100%

第2級

100%

第3級

100%

第4級

92%

第5級

79%

第6級

67%

第7級

56%

第8級

45%

第9級

35%

第10級

27%

第11級

20%

第12級

14%

第13級

9%

第14級

5%

(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)

加害者に逸失利益として請求する場合は、原則として一括で行われます。つまりこれから先の期間において、本来受けとれるはずの収入に該当する金額が前倒しで支払われることになります。

そのため、本来の収入発生までの期間における利息分が加算され、被害者はその分だけ多くの逸失利益を受け取ることになります。

結果として、被害者は必要以上の利益を受けることから、この増額分(中間利息)を逸失利益から控除しなければなりません。

ライプニッツ係数はこの増額分(中間利息)を控除するための指数で、「現在の価値」に引き直したものです。

労働能力喪失期間は、症状固定した日から、一般的な就労可能年数とされる67歳までとされるのが原則です。

ただし、被害者が高齢者の場合は、症状固定から「67歳までの期間」と「平均余命の2分の1」のどちらか長い方が、労働能力喪失期間として扱われます。

また、学生などの未就労者の場合は、症状固定日からではなく、原則として18歳または22歳(大学卒業を前提とする場合)を始期として算定します。

なお、裁判所は、症状によって労働能力喪失期間が制限される場合があります。一般的には、むちうち症で後遺障害等級12級が認定されているケースの場合は5~10年、後遺障害等級14級が認定されているケースの場合は5年以程度に制限される場合が多いです。

年数

ライプニッツ係数

年数

ライプニッツ係数

1

0.9709

44

24.2543

2

1.9135

45

24.5187

3

2.8286

46

24.7754

4

3.7171

47

25.0247

5

4.5797

48

25.2667

6

5.4172

49

25.5017

7

6.2303

50

25.7298

8

7.0197

51

25.9512

9

7.7861

52

26.1662

10

8.5302

53

26.3750

11

9.2526

54

26.5777

12

9.9540

55

26.7744

13

10.6350

56

26.9655

14

11.2961

57

27.1509

15

11.9379

58

27.3310

16

12.5611

59

27.5058

17

13.1661

60

27.6756

18

13.7535

61

27.8404

19

14.3238

62

28.0003

20

14.8775

63

28.1557

21

15.4150

64

28.3065

22

15.9369

65

28.4529

23

16.4436

66

28.5950

24

16.9355

67

28.7330

25

17.4131

68

28.8670

26

17.8768

69

28.9971

27

18.3270

70

29.1234

28

18.7641

71

29.2460

29

19.1885

72

29.3651

30

19.6004

73

29.4807

31

20.0004

74

29.5929

32

20.3888

75

29.7018

33

20.7658

76

29.8076

34

21.1318

77

29.9103

35

21.4872

78

30.0100

36

21.8323

79

30.1068

37

22.1672

80

30.2008

38

22.4925

81

30.2920

39

22.8082

82

30.3806

40

23.1148

83

30.4666

41

23.4124

84

30.5501

42

23.7014

85

30.6312

43

23.9819

86

30.7099

※注 交通事故発生が令和2年4月1日以降のライプニッツ係数になります。

右側の年数は労働能力喪失期間を意味しています。

(具体例)

例えば、40歳の男性、年収400万円、むちうちで後遺障害が14級と認定された方のの場合、

400万円×労働能力喪失率5%×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数4.5797=91万5940円と算定されることになります。

4 最後に

もっとも、実際の実務では、このような単純な計算ではなく、複数の部位に後遺症がある場合等に慰謝料の増額事由として主張したり、職業によっては労働能力喪失率が異なるといったものもあります。

ご自身の適正な損害賠償を行うためには、お早めに上山法律事務所にご相談ください。

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