弁護士業務と交通事故案件②

1 はじめに

交通事故の被害に遭った方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償額を獲得することに努めるのが一般的です。

前回、どんな弁護士が交通事故事件を扱っているのかについて、説明させていただきました。

本日は、他の事件と比較したときの交通事故事件の特徴をお伝えします。

2 交通事故案件の特徴

いわゆるマチ弁と言われる弁護士は、交通事故のみを集中的に扱うごく少数の弁護士以外には、離婚・相続といった家事事件、債務整理案件、不動産関係その他の事件も取り扱っています。

マチ弁が扱う事件の中では、建築紛争案件や医療過誤案件が、専門性が高いと言われています。これらの案件は、弁護士だけの力ではおよそ手続きを進めることができず、建築士や医師にも関与してもらう必要があるからです。

もちろん、不動産事件や不動産の絡む家事事件でも、弁護士だけではなく、不動産業者、不動産鑑定士、司法書士といった隣接他業種が絡むこともあります。しかし、上記建築紛争と医療過誤は、弁護士からすると畑違いといいますか、かなり異なる性質のものを扱うことになりますので、そこに難しさがあります。

では、交通事故案件はどうでしょうか。

後遺障害が問題になる事案であれば、医療過誤と同様に医師の協力が必要になることもあります。医学的な知識が必要ということで、他の一般民事事件と比べてもハードルが上がります。

また、受傷機転(打撲や骨折等の外傷を負うに至った原因や経緯のこと)や過失割合の関係で、事故態様が問題となることがあります。この場合には、交通事故工学の観点での知識が必要になることもあります。科捜研OB等が、交通事故解析のための鑑定業務を行っていたりします。

また、刑事事件が絡む場合には、刑事手続の知識や、免許の停止や取消処分が絡む場合には行政手続の知識も必要になります(これはマチ弁でも皆が扱うわけではありません。特に行政手続はほとんど扱わないと思います)。

3 保険の知識が重要

以上、色々な知識が必要なことをお伝えしましたが、交通事故案件に特徴的なものとして一番大きいのは、保険(主として自動車保険)と社会保障の知識だと思います。

このコラムでも、労災の要件を満たす事案であれば、労災を使った方がいいのか、保険会社から打ち切りにあった場合に、健康保険に切り替えて治療を継続するのかといった問題や、自分の加入する人身傷害補償保険の利用をどうするかといったことを記載してきました。

そもそも、事故に遭うと、通常は相手方の保険会社(任意保険)と交渉するわけですが、任意保険とは別に、自賠責保険があり、また、自分の加入する保険がありと、複雑すぎて混乱してしまいそうです。

また、これらの制度や商品の知識とは別に、損益相殺のことも考えておかないといけません。

たとえば、労災給付は、慰謝料はカバーせずに、主として休業損害や逸失利益に費目拘束があり、遅延損害金は発生しないといった判例の知識や、自賠責保険は費目拘束はなく遅延損害金にまずは充当されるといったことです。

4 まとめ

以上見たように、かなり色々な分野が複合的に絡んでいるのが交通事故案件の特徴です。

弁護士はみんな、司法試験に合格しており、民法の知識は一定水準で保証されています。

しかし、交通事故案件を扱うために必要な上記知識は、試験では問われないもので、弁護士になってからの研鑽がものを言います。

当事務所では、複数の弁護士が研鑽しながら、様々な交通事故案件を扱ってきておりますので、交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

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