時効にかかるのは

1 はじめに~原則的ルール

交通事故の被害に遭われた方は、相手方と交渉等を行って適切な損害賠償金を受け取ることが重要です。

この損害賠償金ですが、いつまでも永遠に請求ができるわけではありません。

2020年4月1日に民法が改正されました。2020年3月31日以前であれば、事故から3年で時効になるとされていました。2020年4月1日以降は、物的損害は3年、人身損害は5年です。

正確に言うと、生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間は、2020年4月1日時点で消滅時効が完成していない場合に適用があり、具体的には、2017年4月1日以降に発生した交通事故については、民法改正により、人身損害の賠償を請求できる期限は、5年間に延長されることになりました。

ただし、自動車損害賠償保障法や保険法の時効は、民法改正に伴う改正が行われてはおらず、2020年4月1日以降も期限は3年のままなので注意が必要です。

2 後遺障害がある場合等の時効の起算点について

この時効期間ですが、物的損害の事案は比較的解決が早い傾向がありますが、人身損害の場合は、治療が長引いたり、相手方保険会社と上手くコミュニケーションがとれなくなり、事故から長期間が経過しているケースも目にします。

この場合、上記期間を経過したら、時効になるということで諦めるべきなのでしょうか。

例えば、治療を継続して後遺障害が残存した場合、上記時効の期間は、症状固定の日からであるとされています。

したがって、民法改正後の事案で、事故から2年が経過して症状固定した場合には、事故から7年間は時効にはかかりません。

細かく言えば、損害項目には、傷害部分(治療費、交通費、休業損害、入通院慰謝料等)と後遺障害部分(逸失利益、後遺障害慰謝料)に分かれます。このうち、傷害部分は、症状固定を待たずに、事故から5年で時効になるのではないかとも思われます。しかし、通常は傷害部分と後遺障害部分は一緒に示談交渉で話し合いをするのであるから、傷害部分の損害項目も症状固定から5年で時効になるという趣旨の判断をしている裁判例があります。

したがって、後遺障害が残存しているケースの場合には、もちろん、早く示談交渉等を進めるべきではありますが、症状固定から5年というのを一つの目安にしていいと思います。

3 治療費の支払い等の弁済がなされている場合

交通事故の加害者が任意保険に加入している場合、通常、任意保険会社が、医療機関等に対して直接、治療費を支払っている場合が多いかと思います。また、任意保険会社から被害者に対して、正式に示談する前に、内払ということで、休業損害や通院交通費等が支払われることがあります。

これらの支払は、保険約款に基づいて、加害者の同意の下、加害者の損害賠償債務の支払を行っているといえます。したがって、時効は中断(更新)すると解されています。

そのため、事故から3年(民法改正前)あるいは5年(民法改正後)が経過していたとしても、これらの最終の支払日がいつなのか。そこから3年あるいは5年が経過していないかを確認する必要があります。

4 まとめ

以上の通り、単純に事故から時効期間が経過しているから請求ができなくなるわけではありません。

このことに誤解があると、交通事故の被害者の方が、せっかく請求できたはずの損害賠償金を、みすみす放棄することになりかねません。

また、これは付随的な問題ではありますが、事故から長期間が経過しているにもかかわらず時効にかかっていない場合には、それだけ遅延損害金が大きく膨らんでおり、相手方保険会社との交渉において、それを一つの交渉材料として使うこともできると思われます。

事故から長期間が経過しても、諦めないことが重要です。

交通事故の被害に遭われ、事故から長期間が経過している方であっても、上山法律事務所に是非ご相談ください。

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