1 はじめに
交通事故の被害者向けに、高次脳機能障害の一般的な知識は、当HPのhttps://kagoshima-koutsujiko.com/koujinou/で記載した通りです。
自賠責でも、労災保険の基準も参考にして判断されていますが、もし、交通事故の被害に遭われ、ご本人やご家族の方が高次脳機能障害と診断された場合、実際に後遺障害等級が何級くらいになりそうか微妙なケースもあると思います。
今回は、実際に当事務所がご依頼をいただいたケースを基に、後遺障害申請や異議申し立てについてご説明しています。
2 後遺障害申請
大前提として、高次脳機能障害の後遺障害認定を得るためには、以下の3つの要件を満たしている必要があります。
①脳損傷が確認できること
②事故後に意識障害があること
③認知障害、行動障害、人格変化の症状があること
①については、CTやMRIといった画像検査
②については「頭部外傷後の意識障害についての所見」
で証明していきます。
ここまでは、当HPのhttps://kagoshima-koutsujiko.com/koujinou/でも記載した通りです。
高次脳機能障害の程度を見極める上では、③が重要です。
③については、主に家族や介護者に「日常生活状況報告」という書面を作成してもらうことになります。学童・学生の場合には、「学校生活の状況報告」という書面もあります。
しかし、これだけでは書ききれないエピソードといったものもたくさんあると思います。
その場合には、別途、任意の書式で構いませんが、「陳述書」といった形で、家族や介護者の方で言いたいことをさらに追加・整理したりする方法があります。陳述書の作成を職場の同僚などにお願いすることもあります。
3 当事務所の担当した事例
当事務所で担当した事例では、当初、高次脳機能障害3級と認定された事案がありました。
既に、CTやMRIといった画像、「頭部外傷後の意識障害についての所見」、ご家族の方が作成した詳細な「日常生活状況報告」を提出していました。
しかし、自賠責には、依頼者の状況を十分に理解してもらえませんでした。
そこで、異議申し立てを行いました。
2級と3級との間には、大きな違いがあります。
例えば、損害賠償の領域では、将来の介護費用が原則として認められるとされているか否かの違いがあります。3級以下の等級であっても事案によって認められているケースはありますが、2級だと原則として認められるという前提になっています。この損害項目だけでも、請求する損害賠償額が大きく異なっています。
また、被害者の方の生活状況という観点で見たときには、労災の基準の「補足的な考え方」の欄をご覧いただければ分かるように、2級の場合、「一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている」という記載があります。
当事務所で担当していた事案では、被害者の方は、一人で外出することができるような状況ではなく、認知障害も進んでおり、排泄も思うようにできないような容態でした。
そこで、具体的にイメージがしやすいように、ご家族の方に動画や写真を撮影してもらい、その状況を陳述書で補足的に説明することによって明らかにしたというケースがあります。
4 まとめ
自賠責の場合、労災と異なり、面談なしでの書面審査になります。
そのため、どうしても、書面ではイメージが付かないこともあると思います。
当事務所では、上記のように動画を提出することによって、具体的に依頼者の方のイメージを掴んでもらう工夫をしました。
判断するサイドの方々は、ご家族と一緒に住んでいるわけでもなく、また、学校や職場等で
顔を合わせたりするわけでもありません。そのため、日常生活の状況をどう理解してもらうのか、自賠責が用意している書式で、本当に被害者の方の状況を正しく伝えることができているのかというのを、しっかり考える必要があると思います。
工夫の仕方は、上記のような動画に限られないと思いますが、事案に応じた最善策を検討することが重要です。
高次脳機能障害は、1,2,3,5,7,9級と、障害等級も重いものです。その上、3級までは、2級刻みになっているため、適切に障害の程度を把握してもらい、等級に反映させることができなければ、請求できる損害賠償額に大きな違いが生じます。
高次脳機能障害その他後遺障害の等級申請等でお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。