弁護士費用と遅延損害金

1 はじめに

交通事故の被害者にとって、適正な損害賠償を受けることは非常に重要です。

損害賠償の項目については、治療費、通院交通費、休業損害、逸失利益、慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)といったものが典型的で、これらについては、何となく聞いたことがあったり、イメージがしやすいと思います。

症状固定によって(事案によっては後遺障害認定の後)、損害が確定し、保険会社と示談交渉に入ります。

その際、保険会社も、上記損害項目については、裁判基準に照らして満額を支払うかは別ですが、交渉の土俵には挙げてきます。

しかし、保険会社は、弁護士費用と遅延損害金という項目については、示談交渉の段階では一切応じないのが通例です。

2 弁護士費用とは

一般に、日本では、紛争解決のために弁護士を選任することが強制されているわけではありません。そのため、ご自身が依頼された弁護士の費用は、ご自身で負担するのが原則です。

しかし、交通事故や医療過誤といった事故を原因とした損害賠償請求(不法行為に基づく損害賠償請求)の場合、実務的には、請求額に10%の弁護士費用を上乗せして請求することが広く行われています。

正確には、訴訟を提起した段階では、原告(被害者)側が請求額の10%を上乗せしますが、裁判所は、判決で認容した額の10%を認めることが多いです。

交通事故の場合、弁護士特約という商品が普及しており、これを利用したとしても同様です。

しかし、示談交渉の段階では、保険会社がこの損害項目を負担することはまずありません。

裁判になると、一般的には、裁判官は和解による解決を探るものですが、和解の段階では、後述する遅延損害金と合わせて、調整金という名目で一定程度を上乗せすることは行われていますが、10%を認めるのは、和解ができずに判決に至った場合が基本になります。

3 遅延損害金とは

一般に、交通事故等の不法行為に基づく損害賠償請求の場合、不法行為の日(事故の日)から損害賠償請求権が発生し、遅滞に陥っている考え方が取られています。

そのため、賠償額の全額が支払われるまで、元金に対する遅延損害金が発生しています。2020年4月以前の事故の場合には年利5%、同月以降は年利3%です。

加害者が事故に誠実に向き合わずに放置した場合はもちろんですが、保険会社との示談交渉が長引いているといった理由を問わず、損害賠償がなされていなければ、遅延損害金は発生しています。

しかし、これも示談交渉の段階では、保険会社は一切負担しません。

裁判になった場合の扱いは、弁護士費用と同じように、和解の段階では調整金名目で、判決になった場合には満額認められるという処理が基本になります。

4 どうすべきか

弁護士費用と遅延損害金について、保険会社が示談交渉の段階では一切認めないことは既にお伝えしました。

しかし、これは見過ごせない損害項目です。たとえば、事故から1年経過していれば、13%上乗せになります。改正前の事故で、事故から3年が経過していれば25%上乗せになります。

もちろん、これら満額が認められるのは、和解ができず判決に至った場合ですが、和解の段階でも一定程度は考慮されますし、もともとの損害額が大きければ、考慮される額も大きくなります。

したがって、後遺障害が残存したケースや、死亡事故の場合等の、損害額が大きくなる事故の場合には、弁護士費用と遅延損害金の上乗せを検討して方針を決めることになると思います。

意外と知られていない問題だと思いますので、交通事故の被害者の方は、是非、頭に入れておいていただけましたらと思います。

上山法律事務所では、損害賠償の回収可能額の見込みを踏まえて、最適な方針を提案するよう努めております。交通事故でお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

keyboard_arrow_up

0992277711 問い合わせバナー 無料法律相談について