1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方は、相手方が保険会社に加入していれば、原則としては、相手方の保険会社が治療費を直接、医療機関に支払うという扱いになることが多いと思います。
一定期間、治療を継続し、症状固定になれば、示談交渉が始まります。
この一定期間については、事故態様や傷害の程度により様々ですが、むちうちの場合は長くて6カ月程度、整形外科領域で骨折があると6か月から1年程度、頭部外傷だと1年から1年半くらいというのが、大まかな整理です(本当に大まかではあります)。
症状固定とは、「怪我の治療を続けてもこれ以上は症状が良くならない」という状態のことですが、基本的には主治医のアドバイスに従ってタイミング等を決めることになります。
この症状固定は、以下に述べるように非常に重要な区切りになります。
2 症状固定と損害項目
典型的な損害項目を参考に見て行くと、症状固定の前後で、以下の損害が区切られます。
(症状固定前)
・治療費
・通院交通費
・休業損害
・入通院慰謝料
(症状固定後 ※後遺障害が残存することが前提です)
・逸失利益
・後遺障害慰謝料
すなわち、症状固定後は、治療費、それに伴う交通費、休業損害、入通院慰謝料が請求できなくなります。
後遺障害が残存しないケースの場合には、逸失利益や後遺障害慰謝料が請求できないことから、症状固定によって損害が区切られることになります。
3 症状固定後の治療費
症状固定のタイミングをどうするのかについては、以前、このコラムに記載したことがありますが、症状固定後の治療費は、原則として加害者側には請求できません。
症状固定とは、「怪我の治療を続けてもこれ以上は症状が良くならない」という状態のことを言いますので、治療費を負担して治療を継続する必要性が失われていると判断されるためです。
そのため、もし、治療を継続したい場合には、健康保険に切り替えて自費負担で行っていただく必要があります。
実際には、保険会社の打ち切り後に、健康保険に切り替えて自費で通院し、痛みは残存するものの、例えば、むちうちであれば、半年が経過したために症状固定にして後遺障害申請を行うといったことがあります。
この場合、実際には、交通事故の被害者の方には、まだ痛みは残存しており、治療を継続したいという意向をお持ちの方がいます。しかし、後遺障害診断書を作成し、そこに症状固定日と記載された日以降は、保険会社は基本的には治療費を負担することはありません。
したがって、症状固定日については、このことをよく考えて、医師と相談する必要があります。
交通事故の被害に遭われ、通院を継続している中で、このようなことまで考えて生活するのは非常にストレスが多いと思います。
保険会社から打ち切られた後に、治療を継続するか悩んでいるという方もいると思います。
交通事故の被害に遭われ、お困りの方は、上山法律事務所にご相談ください。