1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。
これまで、成人を前提にした記事を多く掲載してきましたが、未成年者の事故の場合には、どうなるのでしょうか。
未成年者の事故の場合の損害の考え方は、本サイトでも既に記載しています。
2 誰が示談交渉を進めるのか
未成年者の場合、行為能力が制限されていますので、親権者が財産管理権限を持つことになります。
そのため、親権者が法定代理人として示談交渉を行うことになります。
日本は親が婚姻中であれば、それぞれの親が共同親権者になりますので、両親が代理人になります。
離婚されている場合には、日本は単独親権ですので(今後、法改正で変わる可能性があります)、離婚の際に定めた片方の親権者が代理人になります。
これは、未成年者が被害者であっても、加害者であっても同様です。
被害者の立場の場合には、親権者の方が相手方の保険会社と交渉するという点が変わるだけで、それ以外の点にはあまり違いはありません。
3 加害者側が未成年の場合
示談交渉を親権者が行うことになるのは前述の通りです。
損害賠償責任を誰が負うのかという点については、検討の必要があります。
加害者が未成年者で資力がないという場合には、親から賠償を求めたいところです。しかし、加害者が未成年だからと言って、必ずしも親の責任を問えるわけではありません。
未成年者が加害者の事故の場合、親の責任を問える可能性があるのは、次の3つです。
①未成年者の子供に責任能力がない場合
②親自身の不法行為責任を問える場合
③親名義の自動車・バイクを運転して事故を起こした場合
①責任能力は、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能と定義されます。何歳になったら備わるのかと言うはっきりとした基準はありませんが、これまでの判例や裁判例を見る限り、大体12歳程度で責任能力があると判断されていることが多いです。
加害者が幼く、責任能力がないと判断される場合は、未成年者に代わって親が責任を負わなければいけません(民法714条1項本文)。
親としての監督義務は、子供の日常生活における行動すべてが対象となりますので、よほど不可抗力によって交通事故が起こったようなケースでなければ責任を免れるのは難しいでしょう。
②親自身に民法709条の責任を問えるケースは、かなり限定的です。
・親による監督が現実に可能だった場合
・親が子の運転する自動車に同乗しており、事故を起こすような危険な運転をしていたのにこれを止めなかったような場合
などが具体例とされています。
③未成年者が、親名義の自動車やオートバイを運転して事故を起こした場合、親は、自賠責法上の「運行供用者」として責任を負う可能性があります。
運行供用者とは、次の2点を満たす場合に認められます。
運行を支配している(コントロールできる)こと
運行の利益を受けていること
4 まとめ
未成年であるお子さんが事故に遭う、あるいは、事故を起こしてしまった場合、自分のこと以上に不安が大きいと思います。そのような中で、保険会社と示談交渉を行うことは、さらに負担が大きいと思います。
上山法律事務所では、このような事例も経験がありますので、お困りの際には、是非、上山法律事務所にご相談ください。