1 はじめに(治療費をどうするか)
交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償金を獲得するために努めるのが一般的です。
通常、被害者側の過失が大きいといった事情が無い場合には、保険会社が治療費を病院に支払う運用がなされています。
これをそのまま、気にすることなく続けてよいのでしょうか。
2 労災の場合
労災の場合、治療費は労災から出ます。
休業損害について、特別支給金が出ることから、労災に該当する場合には、労災を積極的に利用した方がいいと思います(これは、損益相殺として差し引きされません)。
では、労災以外の場合にはどうでしょうか。
基本的には、被害者側に過失がない場合には、特に気にする必要がないかなと思います。
ただし、自賠責保険の傷害部分の上限金額は120万円であり、加害者側の保険会社は、治療費等含めて被害者に支払う損害賠償金の総額が120万円を超えそうになると、保険会社の自腹分が出ることを避けるために、治療の打ち切りや治療費の支払いの打ち切りを宣告することがあります。
通院が頻回で、120万円の枠内を治療費が多く占めてしまうような場合、結果として、慰謝料が圧縮される格好になる可能性もあります。
健康保険に切り替えれば、結果として慰謝料を確保した示談がスムーズになる可能性はあります。
また、被害者側に過失がある場合はどうでしょうか。
被害者にも過失がある場合には、被害者も、自身の過失の限度で治療費を負担することになります。
健康保険を利用しないことにより治療費が膨れ上がれば、被害者の負担も大きくなります。
例えば、被害者の全損害が1000万円、過失割合が加害者80%、被害者が20%とすれば、被害者が受け取れる損害額は800万円になります。
このとき被害者が健康保険を使わず自由診療を受け、その治療費が100万円とすれば、被害者が受け取れる800万円を治療費の支払に充てると、被害者の手元には700万円が残ります。
しかし、健康保険を利用すれば、自己負担分は3割の30万円ですので、800万円―30万円=770万円が被害者の手元に残ることになります。
したがって、被害者にも過失がある場合には、健康保険を利用した方が被害者に有利になるのです。
3 まとめ
以上のとおり、治療を継続する過程でも気を付けないといけないことがあります。
上山法律事務所では、事故直後からのご相談に対応しています。
交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所までご相談ください。。