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症状固定の適切なタイミング

2022-08-25

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方で、後遺症が残った場合、後遺障害の等級認定手続を行う必要があります。
その前提として、症状固定とされた後に、主治医から後遺障害診断書を作成してもらわないといけません。
後遺障害の認定手続のバリエーションについては、このコラムで以前記載していますが、今回は、その前段階のことをお話します。

2 一般的な症状固定時期

一般に、事故によってむち打ち症となった場合には、2~3か月くらいで保険会社が治療費を打ち切るという話が出てきますが、後遺障害の等級認定を勝ち取るためには、6か月程度の通院実績が必要であると言われています。
骨折の場合、状態にもよりますが、これまでの私どもの経験で行きますと、ボルトを入れて抜去するような事案であると、ボルトを抜いてリハビリを経て、概ね1年程度で症状固定になり、そうでないケースの場合は6カ月から1年くらいの印象です。
脳の障害の場合には、1年から1年半程度、症状によってはさらに長期間を経て症状固定となっていると思われます。
これらは目安ではありますが、症状固定までの期間は、治療費を損害として請求できる可能性が高く、症状固定後の治療費は原則として請求ができないという棲み分けの意味でも、症状固定時期は重要です。

3 症状固定時期は遅らせた方がよい?

では、症状固定時期は、できる限り遅らせた方が有利なのでしょうか。
後遺障害の等級認定に当たっては、医師の作成した後遺障害診断書と画像を踏まえて判断されます。労災の場合は面談等をして地方医がもう少し丁寧に判断しますが、自賠責の場合は、書面審査が一般的です。
したがって、この後遺障害診断書にどのように書かれるかがポイントになります。
定期的に通院している場合、患者の側から症状固定時期について希望を伝えると、主治医の先生も親身に検討してくれることは多いのではないでしょうか。
しかし、症状固定時期を遅らせた結果、リハビリ効果が出て、症状が良くなるということはあり得ます。そうすると、例えば、可動域の制限が問題となるようなケースの場合、ある時期に症状固定と判断されていれば後遺障害が認定されていた可能性、あるいは、より上位の等級が認定されていた可能性があるのに、症状固定時期を長くした結果、後遺障害が認定されなかった、あるいは、下位の等級が認定されてしまったということが生じ得ます。
もちろん、交通事故の被害者の方からすれば、お体の具体が良くなったということなので、それはそれで喜ばしいことなのですが、賠償の観点からすれば、損をしているという見方もできます。症状固定という言葉が、医学的には症状の改善がない状態という意味であるとすれば、先ほどの「ある時期」の例は、まだ症状固定ではない時期であったともいえるかもしれません。
しかし、タイミングによっては上記のような差異が生じる可能性があることは、頭に入れなければなりません。

4 まとめ

当事務所では、交通事故の被害に遭われた方の症状を定期的に把握し、どの時点で後遺障害の申請に入るか、症状固定のタイミングもアドバイスします。
後遺障害診断書の作成に当たっては、主治医とのコミュニケーションを図る努力もしています(面談をお願いしたり、後遺障害診断書作成に当たって着目して欲しい点について、お手紙を送付したりしています)。
交通事故の被害に遭われ、後遺障害認定を考えていらっしゃる方は、是非、一度、上山法律事務所にご相談ください。

後遺障害の認定について

2022-08-10

1 後遺障害認定手続の種類

交通事故の被害者が、治療を継続した結果、症状固定となり後遺障害が残った場合、後遺障害の申 請及び認定については、以下の方法があります。

① 自ら自賠責に被害者請求を行う

② 相手方保険会社に事前認定手続きをとってもらう

③ 自らが加入する人身障害補償保険に事前認定手続きをとってもらう

これら3つの方法は手続の仕方の差異であり、自賠責調査事務所が後遺障害の認定を行います(JAだけは別の組織を持っていますが、JAの方が一番判断が厳しい印象です)。

これら3つの方法を比較すると、①については、必要書類を自分で収集する手間がありますが、自分の提出したい書類で判断してもらえます。②③については、保険会社側が大半の資料を揃えるので、何を提出されたかが分からないという問題があります。時に、保険会社側が被害者に不利な意見書を付けて提出しているのではないかという話もあります(私どもの方で、この点を保険会社に確認したことがありますが、その際、保険会社は、よほどのことが無い限り、そのようなことはないという言い方でした…)

後遺障害の認定という問題で言えば、どの方法をとっても結論は変わらないという意見もあれば、やはり被害者請求の方がいいのではないかという意見もあります。当事務所としては、それよりも後遺障害診断書の出来が重要と考えておりまして、実際にどの方法をとっても大差は無いと考えています(特に、整形外科の領域(可動域制限等)が問題となる事案では、後遺障害診断書に数字で記載されますので、動かしようがないと思います)。

2 労災

さて、上記で述べたことは一般的な交通事故の案件の場合です。

交通事故の被害者に遭われた方が、勤務中であったり、通勤中であった場合、労災が利用できる場合があります。その場合には、労災に後遺障害の申請を行うこともできます。

一般論としてですが、労災の後遺障害認定は、自賠責調査事務所よりも後遺障害認定については緩やかな印象があります。特に、審査についても丁寧で、自賠責調査事務所の場合は、いわゆる醜状障害と言われる後遺障害が問題となる場合には面談を行いますが、それ以外では面談はありません。

労災の場合、原則、地方医と呼ばれる労災担当の医師と面談があります。また、治療経過や症状についても、詳細に調査がなれています。

3 どちらの手続きを使ったらいいか

以上のような事情があるため、当事務所では、交通事故の被害者の方で、労災が利用できる事案の場合、まずは労災から後遺障害認定を得るようにしています。

ただ、保険会社は、交通事故事案の場合には、労災の認定だけでは示談交渉に応じず、調査事務所の結果を経てから交渉に臨むという姿勢をとってきます。

そのため、労災を経由する分、どうしても交渉に入るまでに時間が掛かってしまいます。

ただ、労災の認定結果の資料を自賠責調査事務所にも使えるため、自賠責でも同様の判断をしてもらえる可能性は高まると思います。

先日、労災で後遺障害12級の認定を得ていたのですが、自賠責では14級という方の依頼を受けました。自賠責では、労災で利用した資料の全てを提出していたわけではないため、当事務所で異議申し立てを行ったところ、自賠責も異議が認められて12級となりました。

4 それでも労災はメリットがある

ただ、結果として、労災と自賠責で異なる判断が出てしまう可能性もあります。その場合、裁判所は、自賠責の判断を優先する傾向があります。

理由は様々あるのですが、労災が明確な根拠を示さずに自賠責より上位等級を認定していると判断 している場合が多いのではないかと思っています。

では、結果的に裁判所が自賠責を優先するなら、このような労災を経由してから自賠責に後遺障害申請を行うという手順が無駄なのかというと、そうでありません。

労災の場合、後遺障害が認定された場合には、特別支給金というものが支給されます(休業補償給付や遺族補償給付でも同様です)。

これは、損害賠償の場面では損益相殺の対象になりません。したがって、これらの支給金は、実際に加害者に損害賠償をする際には差し引きされずに丸まるもらえることができることになります。

まとめると、労災が利用できる事案では、後遺障害がより上位の等級になる余地があること、特別支給金を得られることがから、労災に後遺障害の申請を行うことをお勧めしています。

これらは非常に専門的なお話になりますので、交通事故の被害に遭われた方で、後遺障害認定を考えていらっしゃる方は、是非、上山法律事務所にお問い合わせください。

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