1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。
この示談交渉ですが、一般論としては、人損は症状固定になった後に治療費、交通費、休業損害及び入通院慰謝料(後遺障害が残存していれば、逸失利益及び後遺障害慰謝料)といった損害項目を、一括してまとめて支払うよう交渉していくことになります。
これは、これまでの投稿でも述べてきた通りです。
このうち、休業損害や逸失利益の算定において、基礎収入をどのように算定するかという問題があります。
このコラムにおいても、交通事故の被害者が、給与所得者、会社役員、専業主婦(主夫)、個人事業主の場合等について投稿してきました。
今回は、個人事業主の場合について、さらに見ていきます。
2 個人事業主の基礎収入の算定
以下の頁に一般論を記載しています。
「事故の前年度の確定申告書」を利用して基礎収入を算定します。
確定申告書の「所得」金額を基準に365日で割って1日あたりの基礎収入を計算するのが基本的な計算方法です。
では、「確定申告書の内容は、売り上げを過少に申告していたりするので、本当であればもっと所得は大きい」といった主張は認められるのでしょうか。
確定申告書は、自分が税務署に提出したものになるため、これと異なる主張を行うのは自己矛盾であることから、原則としては認められません。
しかし、裁判所は,申告所得を超える実収入額を証明できれば、例外的に申告外所得を認めることがあります。もっとも、申告外所得について厳格な立証が求められているため、なかなか認められていないのが実情です。
申告外所得については、所得を裏付ける預貯金通帳、会計帳簿、伝票類、取引関係書類等から立証することになります。
裁判所の判断は以上の通りですが、裁判になる前の保険会社との示談交渉においては、まず、保険会社は申告外所得の主張は認めないと思われます。全体として、慰謝料の中で少し柔軟に対応するといったようなことはあるかもしれませんが、当事務所で対応してきた感覚としては、裁判所での判断以上に、保険会社は厳しい姿勢であると感じています。
3 まとめ
申告外所得の主張について見てきましたが、実際に、このような状況にいらっしゃる方は、決して少なくないと思います。
ご本人の場合もあれば、死亡事故のご遺族の立場で問題となる場合もあると思います。
交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。