1 はじめに
前回のコラムでは、刑事事件の流れをメインに記載しました。
刑事事件は、主に加害者が被害者あるいは被告人となって手続にどう関与するかという点が中心でした。
今回は、この刑事事件が、交通事故の被害に遭った方の側から見たときに、保険会社との示談交渉等にどのように絡むのかという観点から記載していきたいと思います。
2 民事の示談交渉の開始時期
まず、刑事事件については、在宅事件と身柄事件に分かれますが、交通事故案件の場合、在宅事件が圧倒的に多いことは前回お伝えしました。
事故後に、警察は、実況見分調書を作成しており、被害者、加害者、あるいは目撃者等の供述調書も作成しています。
これら捜査機関の手元にある書類については、刑事事件の処分が決まらないと、原則開示してもらえません。不起訴の場合には、実況見分調書のみ、有罪判決が確定すれば、検察官が刑事事件で証拠として提出したものは、開示を受けられます。
すなわち、在宅事件の場合には、不起訴であっても起訴されて有罪となった場合であっても、これらの書類の取り付けに時間が掛かるということです。
加害者の保険会社側もですが、警察の作成した実況見分調書は、事故態様や過失割合の検討に当たって、重視しております。そのため、事故態様や過失割合に関し、お互いの言い分が異なる事案の場合には、刑事事件が終了しなければ、民事の示談交渉が進められないという状況になることがほとんどです。
追突等で0対100であることが明らかな事案に関していえば、必ずしも刑事事件を待つ必要な無いかもしれませんが、それでも、関係証拠の精査をしてから民事の交渉を進めるという対応をすることは多くなると思います。
3 時間が掛かるのは悪いことなのか
以上のように記載すると、時間ばかり掛かって良いことは無いように思えてきます。
しかし、警察や検察の捜査に時間が掛かるというのは、それだけ重大な事故になっているケースが多いと思います。そうであれば、時間を掛けてでも慎重に対応するというのは必要なことだと思われます。
また、交通事故の被害者の方の損害賠償請求は、事故から完済までの間、年3%の割合による遅延損害金が付されます(2020年4月の改正前は年5%でした)。
したがって、事故から年月が掛かれば、それだけ損害賠償金に加算されていきますので、例えば、事故から3年が経てば9%が加算されることになり、もともとの損害賠償金が大きければ、付加される遅延損害金額も大きくなります。
以前のコラムで、示談交渉や裁判になった際の遅延損害金の一般的な扱われ方は記載しました。
示談交渉の場では、保険会社は一切負担しないですが、事故から長期間が経過している場合には、裁判になると遅延損害金が問題となることは保険会社も分かっていますので、その分、慰謝料等の額を裁判基準に近づけて解決しようという姿勢になることもあります。
裁判になれば、調整金名目で考慮されることが多くなりますし、事故から長期間が経過していれば、なおさらです。
4 まとめ
本日は、交通事故の被害に遭われた方から見た、刑事事件と示談交渉の絡みと、時間が掛かってしまうことの意味について、書かせていただきました。
上山法律事務所では、刑事事件の絡む交通事故の案件も多く扱ってきましたので、これらの経験を踏まえて、被害者の方のサポートをすることができます。
お困りの方は、是非、上山法律事務所までご相談ください。