Archive for the ‘交通事故の示談交渉について’ Category

申告外所得について

2023-06-01

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。

この示談交渉ですが、一般論としては、人損は症状固定になった後に治療費、交通費、休業損害及び入通院慰謝料(後遺障害が残存していれば、逸失利益及び後遺障害慰謝料)といった損害項目を、一括してまとめて支払うよう交渉していくことになります。

これは、これまでの投稿でも述べてきた通りです。

このうち、休業損害や逸失利益の算定において、基礎収入をどのように算定するかという問題があります。

このコラムにおいても、交通事故の被害者が、給与所得者、会社役員、専業主婦(主夫)、個人事業主の場合等について投稿してきました。

今回は、個人事業主の場合について、さらに見ていきます。

2 個人事業主の基礎収入の算定

以下の頁に一般論を記載しています。

「事故の前年度の確定申告書」を利用して基礎収入を算定します。

確定申告書の「所得」金額を基準に365日で割って1日あたりの基礎収入を計算するのが基本的な計算方法です。

では、「確定申告書の内容は、売り上げを過少に申告していたりするので、本当であればもっと所得は大きい」といった主張は認められるのでしょうか。

確定申告書は、自分が税務署に提出したものになるため、これと異なる主張を行うのは自己矛盾であることから、原則としては認められません。

しかし、裁判所は,申告所得を超える実収入額を証明できれば、例外的に申告外所得を認めることがあります。もっとも、申告外所得について厳格な立証が求められているため、なかなか認められていないのが実情です。

申告外所得については、所得を裏付ける預貯金通帳、会計帳簿、伝票類、取引関係書類等から立証することになります。 

裁判所の判断は以上の通りですが、裁判になる前の保険会社との示談交渉においては、まず、保険会社は申告外所得の主張は認めないと思われます。全体として、慰謝料の中で少し柔軟に対応するといったようなことはあるかもしれませんが、当事務所で対応してきた感覚としては、裁判所での判断以上に、保険会社は厳しい姿勢であると感じています。

3 まとめ

申告外所得の主張について見てきましたが、実際に、このような状況にいらっしゃる方は、決して少なくないと思います。

ご本人の場合もあれば、死亡事故のご遺族の立場で問題となる場合もあると思います。

交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

未成年者の交通事故事件

2023-05-18

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。

これまで、成人を前提にした記事を多く掲載してきましたが、未成年者の事故の場合には、どうなるのでしょうか。

未成年者の事故の場合の損害の考え方は、本サイトでも既に記載しています。

2 誰が示談交渉を進めるのか

未成年者の場合、行為能力が制限されていますので、親権者が財産管理権限を持つことになります。

そのため、親権者が法定代理人として示談交渉を行うことになります。

日本は親が婚姻中であれば、それぞれの親が共同親権者になりますので、両親が代理人になります。

離婚されている場合には、日本は単独親権ですので(今後、法改正で変わる可能性があります)、離婚の際に定めた片方の親権者が代理人になります。

これは、未成年者が被害者であっても、加害者であっても同様です。

被害者の立場の場合には、親権者の方が相手方の保険会社と交渉するという点が変わるだけで、それ以外の点にはあまり違いはありません。

3 加害者側が未成年の場合

示談交渉を親権者が行うことになるのは前述の通りです。

損害賠償責任を誰が負うのかという点については、検討の必要があります。

加害者が未成年者で資力がないという場合には、親から賠償を求めたいところです。しかし、加害者が未成年だからと言って、必ずしも親の責任を問えるわけではありません。

未成年者が加害者の事故の場合、親の責任を問える可能性があるのは、次の3つです。

①未成年者の子供に責任能力がない場合

②親自身の不法行為責任を問える場合

③親名義の自動車・バイクを運転して事故を起こした場合

①責任能力は、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能と定義されます。何歳になったら備わるのかと言うはっきりとした基準はありませんが、これまでの判例や裁判例を見る限り、大体12歳程度で責任能力があると判断されていることが多いです。

加害者が幼く、責任能力がないと判断される場合は、未成年者に代わって親が責任を負わなければいけません(民法714条1項本文)。

親としての監督義務は、子供の日常生活における行動すべてが対象となりますので、よほど不可抗力によって交通事故が起こったようなケースでなければ責任を免れるのは難しいでしょう。

②親自身に民法709条の責任を問えるケースは、かなり限定的です。

・親による監督が現実に可能だった場合

・親が子の運転する自動車に同乗しており、事故を起こすような危険な運転をしていたのにこれを止めなかったような場合

などが具体例とされています。

③未成年者が、親名義の自動車やオートバイを運転して事故を起こした場合、親は、自賠責法上の「運行供用者」として責任を負う可能性があります。

運行供用者とは、次の2点を満たす場合に認められます。

運行を支配している(コントロールできる)こと

運行の利益を受けていること

4 まとめ

未成年であるお子さんが事故に遭う、あるいは、事故を起こしてしまった場合、自分のこと以上に不安が大きいと思います。そのような中で、保険会社と示談交渉を行うことは、さらに負担が大きいと思います。

上山法律事務所では、このような事例も経験がありますので、お困りの際には、是非、上山法律事務所にご相談ください。

休業損害を受け取るタイミング

2023-05-10

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。

この示談交渉ですが、一般論としては、人損は症状固定になった後に治療費、交通費、休業損害及び入通院慰謝料(後遺障害が残存していれば、逸失利益及び後遺障害慰謝料)といった損害項目を、一括してまとめて支払うよう交渉していくことになります。

2 休業損害の請求のタイミング

しかし、被害者の方からすれば、事故によって休業することになれば、有給休暇が利用できれば、減収はないかもしれませんが、そうでない限りには、減収を伴うことが一般的です。

症状固定までの間の生活が厳しく、待つことができないという方もいらっしゃいます。

そのような場合、内払いという形で、相手方保険会社から、毎月、休業損害の一部を支払うよう交渉することもできます。

ただし、当方の過失が大きい場合には、そのような対応を拒絶されることもありますし、内払いの必要性や相当性について争われることがあります。あくまでも任意保険会社による任意の対応にとどまるため、強制はできません。

そのような場合には、自ら、相手方の自賠責保険会社に被害者請求をしたり、交通事故の被害者の方が加入している人身傷害補償保険に対して、対応を求めることもありえます。

休業損害の内払いを受けた分や、自賠責保険ないし人身傷害補償保険から回収したものは、最終的な示談金を算定する際に、既払い分として控除されます。人身傷害補償保険については、当サイトコラムでも投稿していますが、過失割合が問題となるケースでは、まず、過失の部分に充当されることになります。

3 まとめ

交通事故の被害に遭われて、当面の生活にお困りの方は多いと思います。

その際には、是非、上山法律事務所にご相談ください。

依頼を受けてよいか迷う事件

2023-05-02

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の加入する任意保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償金を回収するよう努めるのが一般的です。

当事務所では、様々な交通事故案件のご依頼を受けて参りました。当事務所の取り扱い業務は、交通事故に限られるものではなく、離婚・相続といった家事事件や、破産・再生等の債務整理事件、労働事件、不動産・建築事件、医療過誤といった、いわゆるマチ弁と言われる弁護士が扱う事件は全て対応しています。

加えて、基本的には、いただいたご依頼については、特段の事情のない限りはお受けしていきたつもりであり、これは交通事故案件も同様です。

しかし、どうしても、依頼を躊躇する、あるいは、お断りしなければならないと判断するケースもあります。

以下では、交通事故案件の場合でご説明します。

2 ご依頼をお受けしにくいケース

以前、本サイトでも投稿しましたので、こちらもご参照ください。

以下で述べるものは、いずれも弁護士特約に加入していないことが前提です。弁護士特約に加入していれば、ご依頼を受けることに基本的には躊躇はありません。

①物損事故で、弁護士特約に加入していないケース

物損事故は、過失割合が問題になるか、経済的全損の時価額が問題になっていることが多いと思いますが、弁護士費用を手出しすることになる場合には、その額と比較検討する必要があると思います。

②依頼者の過失が大きく、挽回できる余地があるか微妙な場合

これについても、ご自身で被害者請求をすることをお勧めしています。自賠責は7割以上の過失の場合しか減額されないため、交通事故の被害者の方に過失が大きい場合には、自賠責に請求するのが一番回収額が大きくなる可能性もあるためです。

③人損の被害者ではあるものの、すでに保険会社から事前提示がなされている金額より、弁護士費用の方が上回るケース

このようなケースも該当します。

後遺障害が問題とならない事故、あるいは、非該当になっている事故の場合には、このようなケースもあり得ます。

ただ、このケースの場合には、後遺障害の非該当の判断に納得ができないということで、異議の申し立てをしたいという相談から対応することもあります。この場合も、新たに主治医から意見書を作成してもらう等の協力が得られるか等、異議申し立ての可能性がどの程度あるかを見極めて検討することになります。

一方、後遺障害が認められているケースの場合には、弁護士費用を手出ししてでも依頼をした方がメリットのある事案も多いと思います。

3 まとめ

以上のとおり、弁護士の側も、せっかくご相談いただいた案件について、依頼を受けるか躊躇する案件があります。

それは、弁護士費用特約に加入しておらず、ご依頼を受けると、経済的には赤字になってメリットが無い場合です。

ただ、弁護士特約に加入していなくても、保険会社との交渉に疲れて、費用が赤字になっても弁護士に依頼したいという方もいます。

相手方が保険会社や弁護士を交渉窓口としておらず、相手方本人が交渉してきて話し合いがうまく進まないため、ストレスを感じて弁護士に依頼したいといったケースもあります。

そのため、ご自身の状況を踏まえて、まずは相談だけでも弁護士にしてみることをお勧めします。

交通事故の被害に遭われて、お困りの方は、上山法律事務所にご連絡ください。

近親者の慰謝料について

2023-04-25

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行って、適切な賠償金を獲得するよう努めるのが一般的です。

一般論としては、損害賠償請求権は、交通事故の被害者ご本人に発生するものですから、原則としては、ご本人以外は請求できません。

しかし、死亡事故の場合には、交通事故の被害者に発生した損害賠償請求権をご本人から相続した相続人が請求するということになります。

では、例えば、ご本人だけでなく、近親者にも慰謝料が発生したとして、近親者固有の慰謝料を請求することはできるでしょうか。

2 近親者の慰謝料

当然ですが、大切家族が亡くなったり、後遺障害が残ってしまえば、ご家族も大きな精神的苦痛を受けます。

近親者慰謝料とは、近親者固有の慰謝料とも呼ばれるもので、被害者の近親者が被った精神的苦痛・損害に対して支払われるものです。

「民法」

第711条(近親者に対する損害の賠償)

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

民法には上記条文があります。

しかし、金額については明確な基準はありません。

死亡慰謝料の計算方法は、自賠責基準と任意保険基準、裁判基準の3つの基準によって異なりますが、遺族固有の慰謝料がもっともわかりやすく認められるのは自賠責基準です。

この場合、慰謝料請求権が認められるのは被害者の父母、配偶者と子どもですが、その金額は請求権者の人数によって異なります。

具体的には、請求権者が1人の場合は550万円となりますし、2人の場合は650万円、3人以上の場合は750万円となります。

被害者が扶養していた人(被扶養者)がいる場合、請求権者が1人の場合には750万円、2人の場合には850万円、3人以上の場合には950万円となります。

裁判基準の場合には、「死亡慰謝料」という枠組みの中に遺族固有の慰謝料の金額も組み込まれることになります。

したがって、特段の事情がない限りは、ご本人の死亡慰謝料とは別に近親者慰謝料は発生しないと考えるか、近親者慰謝料の分をご本人の死亡慰謝料の額と調整して算定されている印象です。

3 重度後遺障害が残存した場合

上記民法の条文では、近親者の慰謝料は死亡事故に限られそうにも思えますが、判例では、被害者の方が死亡した時にも比肩しうべき精神上の苦痛を近親者の方が受けたという場合は、近親者からの慰謝料請求が認められます(最高裁判所昭和33年8月5日第三小法廷判決)。

どのような場合に近親者の方に被害者死亡と同等の精神的苦痛が生じたと認められるかですが、後遺障害等級1級・2級などのケースで、近親者慰謝料が認められることがあります。

金額については、死亡のときと同様に基準はありませんが、基本的な考え方は同様であると考えられます。

4 まとめ

交通事故の被害に遭われ、特に、ご家族を亡くされてしまった場合、精神的なショックは大変大きいものと思います。

そのような中で、保険会社と示談交渉を行うことは、さらに負担が大きいと思います。

保険会社の提案が正しいのか、不安もあると思います。

お困りの際には、是非、上山法律事務所にご相談ください。

高齢者の死亡慰謝料

2023-04-18

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償金を獲得するために努めるのが一般的です。

死亡事故が発生した場合、被害者の相続人は悲しみに暮れる日を送ることになります。四十九日が明けると、相手方の保険会社も示談の提案をしてきます。

事案が事案なだけに、神妙な態度で提案をしてきますが、提案内容を確認しないままに印鑑を押していいのでしょうか。

高齢者の死亡事故の場合、給与収入や年金収入の逸失利益と死亡慰謝料が問題となります。

本日は、このうち、死亡慰謝料についてお話します。

2 死亡慰謝料

死亡慰謝料について、自賠責の基準、任意保険会社の基準、裁判基準と3つの基準があります。某保険会社は、被害者側に弁護士がついていないと、一番低い自賠責の基準で提案をしてきますが、その他の保険会社は、任意保険会社の基準で提案してきます。

自賠責よりは高額ですが、裁判基準よりは低額です。

訴訟に至らずに示談で解決をしようとすると、裁判基準の8~9割のラインでの解決が多い印象ですが、高齢者の場合、さらに注意する必要があります。

まず、死亡慰謝料の裁判基準ですが、以下の通りとされています。

・一家の支柱である場合    2800万円

・母親、配偶者の場合       2500万円

・その他                  2000万円~2500万円

一家の支柱の意味については、このコラムでも以前、記載したことがあります。

一家の支柱とは | 鹿児島で交通事故・後遺症でお困りなら無料法律相談対応の弁護士法人かごしま上山法律事務所にお任せください (kagoshima-koutsujiko.com)

以上が、裁判基準です。したがって、これらの金額を前提に、訴訟をしないという前提であれば、どのくらいのラインで示談をするかを検討することになります。

交通事故の被害者の方が高齢の場合、子育てをしている世帯と比較すれば、一家の支柱かどうかについては争われやすくはなります。

また、交通事故の被害者の方に基礎疾患等があり、これも複合的に関連して亡くなってしまったというケースの場合には、素因減額という形で過失相殺的な処理がなされることもあります。

では、そのような事情はなく、交通事故を原因として即死をしてしまったような場合にも、高齢=余命が短いことから慰謝料額は減額されるべきだと主張された場合にはどうでしょうか。

裁判例では、そのような考え方は否定されております。

ただ、保険会社の側が、意図的に低い金額で慰謝料の額を提案してくることがありますので、注意が必要です。

3 まとめ

以上のとおり、高齢者の方の死亡慰謝料について述べてきました。

上山法律事務所では、死亡事故も多く対応してきておりますので、交通事故の被害に遭われた方、あるいは、そのご遺族の方でお困りの方は、是非、上山法律事務所までご相談ください。

弁護士業務と交通事故案件②

2023-04-04

1 はじめに

交通事故の被害に遭った方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償額を獲得することに努めるのが一般的です。

前回、どんな弁護士が交通事故事件を扱っているのかについて、説明させていただきました。

本日は、他の事件と比較したときの交通事故事件の特徴をお伝えします。

2 交通事故案件の特徴

いわゆるマチ弁と言われる弁護士は、交通事故のみを集中的に扱うごく少数の弁護士以外には、離婚・相続といった家事事件、債務整理案件、不動産関係その他の事件も取り扱っています。

マチ弁が扱う事件の中では、建築紛争案件や医療過誤案件が、専門性が高いと言われています。これらの案件は、弁護士だけの力ではおよそ手続きを進めることができず、建築士や医師にも関与してもらう必要があるからです。

もちろん、不動産事件や不動産の絡む家事事件でも、弁護士だけではなく、不動産業者、不動産鑑定士、司法書士といった隣接他業種が絡むこともあります。しかし、上記建築紛争と医療過誤は、弁護士からすると畑違いといいますか、かなり異なる性質のものを扱うことになりますので、そこに難しさがあります。

では、交通事故案件はどうでしょうか。

後遺障害が問題になる事案であれば、医療過誤と同様に医師の協力が必要になることもあります。医学的な知識が必要ということで、他の一般民事事件と比べてもハードルが上がります。

また、受傷機転(打撲や骨折等の外傷を負うに至った原因や経緯のこと)や過失割合の関係で、事故態様が問題となることがあります。この場合には、交通事故工学の観点での知識が必要になることもあります。科捜研OB等が、交通事故解析のための鑑定業務を行っていたりします。

また、刑事事件が絡む場合には、刑事手続の知識や、免許の停止や取消処分が絡む場合には行政手続の知識も必要になります(これはマチ弁でも皆が扱うわけではありません。特に行政手続はほとんど扱わないと思います)。

3 保険の知識が重要

以上、色々な知識が必要なことをお伝えしましたが、交通事故案件に特徴的なものとして一番大きいのは、保険(主として自動車保険)と社会保障の知識だと思います。

このコラムでも、労災の要件を満たす事案であれば、労災を使った方がいいのか、保険会社から打ち切りにあった場合に、健康保険に切り替えて治療を継続するのかといった問題や、自分の加入する人身傷害補償保険の利用をどうするかといったことを記載してきました。

そもそも、事故に遭うと、通常は相手方の保険会社(任意保険)と交渉するわけですが、任意保険とは別に、自賠責保険があり、また、自分の加入する保険がありと、複雑すぎて混乱してしまいそうです。

また、これらの制度や商品の知識とは別に、損益相殺のことも考えておかないといけません。

たとえば、労災給付は、慰謝料はカバーせずに、主として休業損害や逸失利益に費目拘束があり、遅延損害金は発生しないといった判例の知識や、自賠責保険は費目拘束はなく遅延損害金にまずは充当されるといったことです。

4 まとめ

以上見たように、かなり色々な分野が複合的に絡んでいるのが交通事故案件の特徴です。

弁護士はみんな、司法試験に合格しており、民法の知識は一定水準で保証されています。

しかし、交通事故案件を扱うために必要な上記知識は、試験では問われないもので、弁護士になってからの研鑽がものを言います。

当事務所では、複数の弁護士が研鑽しながら、様々な交通事故案件を扱ってきておりますので、交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

弁護士業務と交通事故案件

2023-03-28

1 はじめに

交通事故の被害に遭った方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償額を獲得することに努めるのが一般的です。

これまで、その方法について、このサイトの投稿記事でも様々な情報を掲載してきました。

もちろん、ご本人での対応が難しい場合には、弁護士に依頼をして進めることになると思います。

本日は、交通事故事件を扱う弁護士について、お伝えします。

2 弁護士の仕事

弁護士業務といっても、取り扱う業務内容はまちまちです。

企業法務と言われる会社の案件を中心に扱う弁護士もいれば、いわゆるマチ弁と言われる個人の依頼者からの依頼を中心的に扱う弁護士もいます。

交通事故は主に後者の弁護士が取り扱うことが多いですが、この中でも、離婚・相続といった家事事件や、債務整理等の案件も扱いながら交通事故を扱う弁護士もいれば、交通事故案件そのものを集中的に扱う弁護士もいます。

当事務所は鹿児島県弁護士会に所属する弁護士ですが、私どもの知る範囲では、鹿児島の弁護士の中で、交通事故だけを扱っている弁護士はいないのではないかと思います。様々な案件に対応しながら、その中で交通事故事件の占めるウエイトが多いか少ないかという違いになると思います。

近年、交通事故案件は、リスティング広告が高額になっていたり、弁護士の中でも力を入れている方とそうでない方がおり、相対的に事件が回らず、ほとんど扱わないか、年に数件しか扱わないという弁護士もいると思います。

一方、保険会社の顧問弁護士という形で、主として加害者の側で活動する弁護士は一定数います。このような形で関与している弁護士は、相対的に見て、交通事故の取扱件数は多いと思います。ただ、特定の保険会社とは利害関係があるために、被害者側の代理人として活動ができないという制約があったりします。

当事務所は、保険会社の顧問弁護士はしておりませんので、このような制約はありません。

3 まとめ

交通事故の被害に遭われた方で、対応にお困りの方は、弁護士に相談・依頼をされることをお薦めいたします。

上記の通り、弁護士交通事故を取り扱う弁護士にどのような種類があり、どのような仕事をしているかといったことを記載しましたので、参考にしていただければ幸いです。

当事務所では、コンスタントに交通事故案件に携わっておりますので、お困りの方は、是非、上山法律事務所までご相談ください。

こちらの過失が大きい事故の場合

2023-03-14

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方で、自身にも過失が問われて過失相殺が問題となることはよくあると思います。

こちらの過失が大きいと評価されるケースの場合、どのように処理すべきでしょうか。

(こちらの過失が大きいわけですので、こちらを被害者、相手方を加害者と呼んでいいのかという問題もありますが、ひとまず、この点は措いておきます)

2 物損について

交通事故の被害者の方が、弁護士特約に入っている場合には、弁護士の立場からすれば、受任すること自体に躊躇はありません。

その上で、できうる主張をして少しでも相手方と過失割合について調整を図るということになるだろうと思います。

しかし、弁護士特約に入っていないとなると、悩ましいです。

修理費用にもよると思いますが、過失割合で何とか上手い解決に結びつけられたとしても、そこで獲得できる差額よりも、弁護士の着手金の方が高額になってしまうケースもあるからです。

このようなケースの場合には、人損も生じていて、そこから一定程度の損害賠償金を獲得できる見通しでなければ、交通事故の被害者の方にとって、弁護士に依頼することによる経済的メリットが無いということになってしまいます。

3 人損について

物損と同様、交通事故の被害者の方が、弁護士特約に入っていれば、弁護士の立場からすれば、受任することに躊躇はありません。

しかし、交通事故の被害者の方が、弁護士特約に入っていない場合で、被害者の過失が大きいときには、受任すべきかどうか悩みます。

まず、相手方の主張内容が正しいのか、事故状況や事故現場を調査します。

その上で、症状等から予想される総損害額を見通して、先方の主張と当方の主張する過失割合を比較して、弁護士に依頼する経済的メリットがあるかどうかを検討することになります。

過失割合を争うのが難しそうな場合、あるいは、争ったとしても、経済的メリットのなさそうなケースの場合には、ご自身で被害者請求をすることをお勧めしています。自賠責は7割以上の過失の場合しか減額されないため、交通事故の被害者の方に過失が大きい場合には、自賠責に請求するのが一番回収額が大きくなる可能性もあるためです。

4 まとめ

以上のとおり、弁護士に依頼すると、経済的には赤字になってメリットが無いというケースも世の中にはそれなりに存在します。

しかし、交通事故に遭い、どのように対処したらいいのかお困りなのは、どちらでも変わらないと思います。

そのようなときには、相談だけでも弁護士にしてみることをお勧めします。

交通事故の被害に遭われて、お困りの方は、上山法律事務所にご連絡ください。

交通事故訴訟の進み方

2023-03-07

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、通常、相手方の保険会社と示談交渉を行います。しかし、相手方の保険会社の提示する金額に納得ができない場合には、訴訟によって解決を図ることになります。

どこの裁判所で行うことになるのかという問題については、前回のコラムで記載しましたので、

今回は、裁判が実際にどのように進んでいくのかということをお伝え致します。

地方裁判所と簡易裁判所で大きく違いはありませんが、主として地方裁判所の進め方を前提にしています。

2 流れ

(1)訴状

まず最初に、裁判所に訴状を提出します。

訴状には、事故の状況、入通院経過、症状、損害等をまとめて整理したものを記載します。

その際に、特に事故態様については、

・車両の損傷状況の写真

・事故現場の写真や動画

・これらを図面にしたもの

を提出するのが、裁判を早く進めるために望ましいです。

刑事事件になっていれば、警察の作成した実況見分調書を取り付けて提出するという方法をとるのが一般的です。

そうでない場合には、原告側で現場に行って撮影したりして、図面に起こします。

後遺障害について争いがある場合(原告になる交通事故の被害者方の方で、自賠責等が認定した後遺障害結果に不服がある場合)には、その根拠となる資料を早めに準備し、訴状に盛り込めると審理の早期化に資すると言えます。

裁判所に訴状を提出すると、概ね1か月から1か月半後に、第1回口頭弁論期日が指定されます。

(2)答弁書

第1回口頭弁論期日までに、被告側が答弁書を提出します。だた、被告側は一方的に訴えられる関係にありますので、第1回口頭弁論期日は出席せずに、第2回期日までに反論するという形で、簡単な答弁書を提出することも認められています。

第2回期日以降も、概ね1か月から1か月半に1回くらいのペースで裁判は進んで行きます。

(3)準備書面での整理

その後は、準備書面の提出という形で、争点についてお互いの主張立証を尽くしていきます。

訴訟に発展する交通事故事案の争点としては、

・事故態様と過失割合

・後遺障害の程度

・損害

について、争点になることが多いです。

訴訟の開始から半年から1年くらいで、争点整理が終わります。

(事案によっては、もっと早く整理ができる事案もありますし、2年以上争点整理に時間を要する事案もあります)

(4)和解勧試

争点整理が終わると、裁判所から暫定的な心証に基づいて和解案が示されることが多いです。

この段階で、お互いが納得すれば、和解によって裁判は終了します。

和解の席には、当事者ご本人の方が出席する義務はありませんが、事案によっては、裁判所から出廷を求められることもあります。

往々にして、原告の主張の全てが裁判所の心証によれば認められない事案で、求められることが多い印象です。

(5)本人尋問・証人尋問

前述の和解ができないと、本人尋問・証人尋問の手続きになり、裁判所に出廷して直接お話を伺うことになります。

これには、事前の準備等もあり、交通事故の被害に遭われた方が当事者として手続きに関与する中では、一番濃い関与の仕方になると思います。

(6)判決

以上の尋問手続が終了すると、裁判所から改めて和解勧試がある場合もあり、それで話し合いがつけば裁判は終了となります。

しかし、話し合いが付かないと、判決言い渡しになります。

(7)控訴・上告

1審の判決に不服があれば控訴、高等裁判所の判断に不服があれば上告ができます。

3 まとめ

以上のように、裁判の流れをお伝え致しました。

以下は、あくまで当事務所の感覚です。

事件の終わり方としては、和解による終了がほとんどで、判決に至るケースは、全体から見ると稀です。

ただ、判決に進んだケースのほとんどは、和解で解決ができなかった事案になりますので、控訴に至っている印象です。

時間的には、和解できる事案については、訴訟提起から6~12カ月以内(10カ月くらいが一番多い?)での解決が多いのではないでしょうか。その場合には、交通事故の被害者の方ご本人は、1度も裁判所に出向かなくて済んだというケースが多いと思います。

あくまで当事務所の感覚になりますが、参考にされてください。

交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所までご相談ください。

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