Archive for the ‘交通事故の保険について’ Category

保険内容は複雑です

2024-04-04

1 はじめに(保険内容の複雑です)

交通事故の被害者は、加害者の加入する保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を獲得するための努力をしていくことになります。

その中で、最も典型的な保険は、加害者の加入する対人賠償保険です。

通常は、対人賠償に入っていれば、対人無制限と言って、金額に限界はなく保険は支払われます。ただ、保険会社側が、裁判所の基準や判例等を踏まえて、支払う金額について諸々の主張を行いますので、加入している加害者本人が、保険会社に対して、「自分はもめたくないので、被害者の言う通りに全部払ってください」と言ったところで、その通りになるわけではありません。

その他に、交通事故の被害者が加入している保険から、弁護士特約を利用したり、また、人身傷害補償保険を利用する選択もあり得ます。

このコラムでも、これまで複数回、お伝えしてきました。

例えば、弁護士特約については、以下の通りです。

人身傷害補償保険については、以下の通りです。

2 各保険商品の内容

これらの保険商品については、対人賠償は、各保険会社であまり違いはないものと思われます。

もちろん、年齢制限があったり、運転者の範囲に限定があったりすることはありますが、それは、保険会社毎に大きく違うというわけではないと思います。

ただ、弁護士特約や人身傷害補償保険については、内容や適用範囲が微妙に違ったります。

例えば、費用をもらう弁護士側からすれば、自賠責での賠償額に相当する部分は手数料として2%になるのですが、それをそもそも支払ってさえくれない保険会社があります(私の知る限り、1社だけです)。

他にも、人身傷害補償保険については、車に乗っているときだけしか補償しないのが原則だる場合や、歩行者である場合も広く含んだ場合もあります。

このように、保険内容は本当に複雑で、弁護士の立場でも、予め各保険会社の保険商品の内容をカバーすることは難しく、事案ごとにきちんと確認する必要があります。

3 まとめ

上山法律事務所では、交通事故の被害者の方が加入されている保険内容を踏まえて、方針について一緒に協議して行きます。

弁護士特約加入の有無を問わず、交通事故の相談は無料としていますので、まずはお気軽にご相談ください。

私どもの方で利用可能な保険を調査することも可能です。

お困りの際には、上山法律事務所にご相談ください。

保険料差額(保険料の増額分)を加害者に請求できるか

2022-11-17

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた場合、基本的には加害者の加入する保険会社から賠償を受けることになります。

しかし、例えば、物損事故で、経済的全損(車両の修理費用が時価額を上回る場合)の場合、車両を買い替えることなく修理に出したいと言っても、加害者側の保険会社が修理費用の全額を負担してくれません。

このような経済的全損のケースに限らず、車両保険に加入されている場合、交通事故の被害者がそれを利用して損害の補填を行ったときには、自らの加入する保険の等級が下がり(3等級下がると言われています)、保険料が増額されることになります。

では、このように交通事故の被害者の方の増額された保険料の分を、加害者に請求できるでしょうか。

2 保険料差額(保険料が上昇した分)を請求できるか

確かに、交通事故によって車両保険を利用することになったわけですので、事故がなければ利用することもなかったという意味では、因果関係があるようにも思えます。

しかし、保険を使うかどうかの選択は、被害者の意思が介在します。

保険を使わなければ、当然、保険料が割増になることはなく、損害は発生しません。

車両の損傷自体が損害だとすると、その損傷が修繕されれば、損害は填補されます。

加害者の側からすれば、車両の修理代は損害ということになりますが、それで損害が填補されれば、保険を使っても使わなくても一緒だということになります。つまり、交通事故の被害者が車両保険を利用して保険料差額まで負担しなければならないとすると、利用された場合には加害者の損害が拡大することになります。

以上のような事情を踏まえて、保険料差額については、因果関係が無いということで否定されると考えられています。

3 人損の場合はどうか

これまで、物損事故における車両保険をメインに見てきました。

では、交通事故の被害者の側にも過失があり、過失相殺がなされるような事例の場合に、加害者側に支払う対人賠償保険についてはどうでしょうか。

車両保険との違いで言えば、対人賠償の場合には額も大きくなり、通常は利用するのが原則であろうということかと思います。

しかし、この場合であっても、自分の掛けた保険を利用するのは、まさに、保険を掛けた目的を実現するということであり、車両保険と同様に、保険料差額の請求はできないと考えられています。

4 まとめ

以上見たように、交通事故の被害者が、自ら加入する保険を利用することで保険料が増額されたとしても、その額を相手方に請求することは否定されるのが一般的です。

しかし、交通事故の実務の中では、相殺払いをするか(それぞれの過失部分を考慮し、損害賠償の中から清算して支払う)、あるいはクロス払い(それぞれが過失割合に従って相殺することなく賠償金を支払う)といった場面を典型例として、自分の加入する保険を利用するかどうか悩ましいケースもあります。

そのような場合に、相手方に保険料差額を請求できないことを前提に検討することが必要です。

場合によっては、保険を使った場合に増額される保険料と、手出しの金額のどちらが大きくなるかを比較して検討することが必要な事例もあります。

保険の利用を含めた総合的なベストの解決を探るため、交通事故の被害に遭われた方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

相手方が無保険の場合

2022-09-08

1 はじめに

交通事故の被害に遭い、相手方が無保険だった場合、皆様はどうしますか。まずは、被害に巻き込まれた上に、加入すべき保険に加入せず、正当な賠償を受けられないのではないかという不安や憤りを覚えるのではないでしょうか。

被害者として当然のことと思います。

本日は、当HP内の「無保険の加害者と事故に遭ったら」(https://kagoshima-koutsujiko.com/muhoken/)について、当事務所で経験談を踏まえて、詳しく書いていきたいと思います。

相手方が無保険というのは、強制保険(自賠責)に加入していないケースと、自賠責には加入しているけれど、任意保険に加入していないケースというのがあり得ます。

前者の強制保険(自賠責)に加入していないケースの場合、人損の部分に関しては、政府保証事業制度というものを利用して、自賠責と同様の補償を受けられる可能性があります。しかし、そうであっても、後者の任意保険に加入していないケースと同様に、上乗せ部分についての補償が受けられない可能性があります。

以下では、相手方が任意保険に加入していない場合ということでお話を進めます。

2 相手方が任意保険に加入していない場合

相手方の自賠責(あるいは政府保証事業制度)から回収できなかった部分については、相手方と直接交渉して支払ってもらうよう働きかけるのが原則的な対応になります。

しかし、相手方に支払能力が無く、治療費の支払いすら期待できそうにないケースや、途中から加害者と連絡が取れなくなったということで弁護士の下に相談に来られるケースもあります。

そのような場合、人身傷害補償保険の活用を検討してみる価値があります。

3 人身傷害補償保険の活用

人身傷害補償保険については、令和4年7月29日のコラムでも色々と書かせていただきました。特に、この商品の存在によって、過失相殺の結果に拘らずに進めることができる可能性があることをお伝え致しました。

しかし、人身傷害補償保険にはもう一つ良い点があります。

交通事故の損害賠償は、相手方の保険会社と交渉して回収するのをイメージされる方が多いと思いますが、ご自身が人身傷害補償保険に加入している場合には、ご自身の保険会社に連絡をして支払ってもらうこともできます。

この人身傷害補償保険ですが、一般に上限を3000万円と5000万円で設定されているケースを多く見ます。ただ、相手方が無保険の場合には上限を撤廃して無制限になるという対応をしている保険会社も存在します。

私どもが経験した事例では、被害者には高次脳機能障害により重度の後遺症が残りましたが、加害者が任意保険に加入していなかったというものがありました。その事例では、被害者の人身傷害補償保険を利用し、7000万円近く保険金を支払ってもらいました。

また、人身傷害補償保険は、ご家族が加入する保険で利用ができたり、歩行中の交通事故でも利用できる可能性があります。先ほどの私どもが経験した事例では、被害者ご自身は人身傷害補償保険には加入していませんでしたが、奥様が加入しており、それを利用して保険金を受け取ることができました。

このように、見落とされる可能性がある一方で、利用できるのとできないのでは天と地ほどの差があります。

相手方が無保険の場合であっても、諦めずに知恵を絞ることが重要です。一緒に解決策を考えますので、上山法律事務所にご相談ください。

4 物損の場合

なお、物損事故の場合、残念ながら、人身障害補償保険は利用できないので、ご自身が車両保険に加入していない場合には、無保険の相手方と直接交渉をしなければなりませんので、ご注意ください。

弁護士特約の範囲

2022-08-18

1 弁護士特約とは

弁護士特約は、交通事故の被害者にとって、弁護士への依頼のハードルを下げるとても大事な商品です。

現在、普及率はかなり高いと思いますが、時折、明らかに弁護士が介入すべき事案であるのに、弁護士特約に加入していないために及び腰になってしまっている方をお見受けします。毎月の保険料にすれば多額でも無いため、是非加入を推奨したい商品です。

さて、この弁護士特約ですが、弁護士報酬の上限は300万円となっています。大半はこの範囲内で賄えるであろうと思います。当事務所で弁護士特約を超える案件は記憶にありません。

2 弁護士特約の適用範囲

また、本来使えるはずであったのにそれに気づかないということもありうると思います。

弁護士特約の適用範囲について、各保険会社の約款を確認する必要はありますが、概ね以下の通りとしている保険会社が多いのではないでしょうか。

① 契約者(被保険者)本人 

② 契約者(被保険者)の配偶者

③ 契約者(被保険者)の同居の親族

(例)同居中の父母、兄弟姉妹、子、配偶者の親族

④ 契約者(被保険者)の別居未婚の子

(例)実家を出て暮らしている結婚していない子ども

⑤ 契約車に搭乗中の者

⑥ 契約車の所有者

要するに、自分が加入している保険でなくても使える場合があるのです。

そのため、当事務所では、法律相談をお受けした際に、ご自身が弁護士特約に加入していないというケースであっても、必ず、ご家族等の加入状況も確認するようにしています。

交通事故の被害者の方にとって、弁護士特約を利用できるかは、適切な損害賠償を受け取ることができるかという点からも非常に重要な問題です。

そのため、まずは、ご家族の加入状況等も忘れずに確認されてみてください。

上山法律事務所では、弁護士特約加入の有無を問わず、交通事故の相談は無料としていますので、まずはお気軽にご相談ください。私どもの方で弁護士特約の利用の可否を調査することも可能です。

人身傷害補償保険について

2022-07-29

1 自分の加入する保険会社 とも話ができる

交通事故の被害に遭われた方のほとんどは、加害者の加入する任意保険会社と交渉するものと考えていると思います。

しかし、自分の加入している保険会社に確認し、人身傷害補償保険という保険に入っている場合、ご自身の加入する保険会社から保険金を払ってもらえる可能性があります。

2 メリット

メリットとしては、人身傷害補償保険は、過失割合を問わない商品と言われており、相手方保険会社が過失割合等で争ってきてなかなか話し合いが付かない場合に、速やかに一定程度の保険金を確保できるという点が挙げられます。また、弁護士特約と同様に、人身傷害補償保険を利用しても、等級が下がって毎月の保険料が上がるということもありません。

3 注意点

ただ、注意も必要です。人身傷害補償保険を支払う保険会社は、人傷基準といって、自社基準に従って保険金額を算出し、支払います。裁判基準(弁護士基準)よりは低くなることがほとんどです。そのため、裁判基準(弁護士基準)で満額を回収しようと思ったら、やはり最終的には裁判をする必要が出てきます。

裁判をすると、人身傷害補償保険は、裁判基準(弁護士基準)に従って計算された損害額の中から、過失相殺で相手方から差し引かれる部分について支払ってもらえます(これは、相手に裁判をした後から人身傷害補償保険をもらう場合です)。先に人身傷害補償保険をもらってから、相手方に裁判をした場合は、裁判基準(弁護士基準)に従って計算された損害額の中から、まず、過失相殺で差し引かれる部分について充当された上で、その他の損害の一部に充てられたという計算をします。

4 まとめ

やや話が複雑になりましたが、結論としては、人身傷害補償保険を相手方に裁判する前にもらっても、後からもらっても、裁判基準(弁護士基準)で計算された損害から過失相殺で差し引かれた部分も全額回収できるということです。

その意味で、過失割合に拘る必要がなくなり、交通事故裁判で難しい争点の一つと言える過失相殺の問題が消えるというメリットがあります。逆に、過失相殺が問題となるケースでは、常に利用の要否を検討する必要がある商品です。

なお、ご自身が人身傷害補償保険に加入していなくても、ご家族が加入する保険で利用ができたり、歩行中の交通事故でも利用できる可能性があります。保険会社は、申請されなければ交通事故が発生したかどうか分からないため、調査はしません。そのため、結構見落とされているケースもあると思っています。

交通事故に遭われて、過失相殺が問題になる場合には、いつでも上山法律事務所にご相談ください。

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