Archive for the ‘交通事故の示談交渉について’ Category

保険会社によって、示談交渉に違いはあるのか

2022-12-01

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、お怪我や物損の修理はもちろんですが、相手方の保険会社から適切な示談金を支払ってもらうことが重要です。

これまで、特に、過失割合が問題となる事案の場合等は、人身傷害補償保険を利用すること、つまり、ご自身の加入する保険会社に請求することも重要であることをお伝えしましたが、基本は、相手方の保険会社から支払ってもらうことになると思います。

では、この相手方の保険会社の示談交渉における対応について、保険会社毎に違いはあるのでしょうか。

結論から言うと、違いはあると思います。

2 どんな違いがあるか

(1)一般に、どの保険会社も、整骨院の治療に非常にシビアなところがありますが、ある保険会社は事故から3か月が経過すると一切認めない等といった形で、傾向があると思います。

(2)また、保険会社は、示談の提案をする際に、自賠責の基準を下回った提案をしてはいけないことになっていますが、交通事故の被害者の方に弁護士が付いていないと、自賠責の基準とほとんど同じような提案をしてくることがあります。

その方は、弁護士特約に加入されていなかったのですが、実際に、当事務所が相談を受けて、裁判基準等をご説明し、できるところまで一人対応していただくようアドバイスをしたのですが、当該保険会社からは、「弁護士が付かないならこれ以上は示談金の額は上がらない」等という趣旨不明な理由で対応してきました。実際に私どもが依頼を受けたら、相当額の金額の上乗せがありました。

その方は大変お怒りでしたが、当然だと思われます。当該保険会社の提案内容や姿勢は、その件だけに限られないものでした。

(3)他にも、とある保険会社は、慰謝料や主婦の休業損害がかなり低く見積もられており、当事務所が相談を受けて対応したところ、すぐに倍以上の提示をしてきたということもありました。その保険会社もまた、そのような対応が複数回見られています。

(4)一方、弁護士が付いていても、訴訟外の示談交渉の場面では、どの保険会社も、裁判基準の満額の支払いはしてくれません。

特に慰謝料について、8割から9割くらいの間で話し合いを付けることが多い傾向にあります。

ここの支払いについても、保険会社によって、訴訟外で認める幅が広い会社と狭い会社の傾向があると思っています。

3 まとめ

以上のように、実名は出せませんが、私どもは、保険会社による傾向の違いは間違いなくあると思っています。

そのため、当事務所では、交通事故の被害者の方からご依頼を受ける際には、相手方の保険会社がどこの会社か、場合によっては、その担当者が誰かについても関心を持っています。担当者は、物損担当と人損担当で分かれていることが多く、過去にスムーズに行った担当者なのかどうかについては、結構、関心を持っています。

当事務所では、某保険会社が相手方になったときには、示談で満足の行く解決ができない可能性が高いことから、速やかに訴訟提起の方針をとり、現に訴訟率が高くなっているといったこともあります。

このように、保険会社毎の特色もある程度把握しておりますので、相談初期からそのことをお伝えできる範囲でお伝えし、その後の方針を決めることに活かしています。

少しでもお役に立ちたいと思いますので、交通事故の被害に遭われてお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

飲酒運転について

2022-11-24

1 はじめに

飲酒運転は社会問題化され、刑事事件の方面では厳罰化されていることは、皆様ご存じだと思います。

道路交通法上は、飲酒運転には、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があります。

(1)酒気帯び運転

 酒気帯びとは、体内に一定値以上のアルコールを保有している状態で、具体的な基準は、呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上、または血中アルコール濃度0.3mg/ml以上とされています。 

0.15mg以上~0.25mg未満の酒気帯び運転の違反点数は原則として13点です。13点は前歴がない方にとっては免許の停止90日となります。

0.25mg以上の酒気帯び運転は違反点数25点となり、免許の取消(欠格期間2年)となり、重い処罰が用意されています。

刑事罰については酒気帯び運転として違反と認められれば、アルコール量の区別なく「3年以下の懲役、または50万円以下の罰金」となります。

(2)酒酔い運転

一方、酒酔いとは、アルコールの影響により正常な運転ができない状態で、体内のアルコール濃度によってではなく、正常な運転ができないほど酔っていたかどうかによって判断されます。

酒酔い運転の場合、違反点数は35点となり、免許の取消(欠格期間3年)となります。

刑事罰については、5年以下の懲役、または100万円以下の罰金となります。

2 過失割合

では、飲酒運転をしていた場合、過失割合にはどのような影響があるのでしょうか。

一般に、交通事故賠償実務において、過失割合の参考にされる「別冊判例タイムズ38号」という本がありますが、これには事故類型別に基準が定められています。

この中には、「飲酒運転をしているからどうなる」ということは明確には定められていません。

ただ、交通事故の被害者あるいは加害者に、著しい過失があう場合には5~10%、重過失の場合には5~20%ほど、過失割合が修正されるものとされています。

個別具体的な事故の状況にもよりますが、これに当てはめると、酒酔い運転なら「重過失」として加害者側に5%~20%が加算され、酒気帯び運転なら「著しい過失」として5%~10%程度が加算されるとされています。

修正の割合に幅があるのは、飲酒量やその他の事故状況等を踏めて決まると考えていただければと思います。

ただ、飲酒運転が事故の原因として影響しているとはみなされず、飲酒運転していても過失割合が修正されない場合もあります。

以上を整理すると、飲酒運転と事故原因が無関係と言える場合は別として、基本的には、飲酒量その他の状況を踏まえて、過失は上乗せされるものと考えていただけましたらと思います。

3 最後に

当然ではありますが、飲酒運転は、それ自体危険性が大きく、厳に避けなければなりません。

上山法律事務所では、交通事故の被害に遭われた方で、加害者が飲酒運転中であったという事案も経験しておりますが、飲酒した後、駐車場でひと眠りしてお酒が抜けたと考えて運転いたところ、事故を起こしてしまったというケースも経験しています。

お困りの際には、上山法律事務所にお問い合わせいただけましたらと思います。

会社役員の休業損害

2022-11-10

1 はじめに

交通事故の被害者の方が、会社の代表取締役等の役員であった場合、休業損害の算出はどのようになされるのでしょうか。

これまで、以下のものを掲載してきました。

・給与所得者や自営業者の場合

・主婦(主夫)の場合

・給与所得者の基礎収入についての考え方

2 会社役員と給与所得者との違い

会社役員の場合、これらとは異なる考え方が取られます。

会社役員は、会社と委任関係にあります。そのため、いわゆる雇用契約を締結しているサラリーマンとは異なります。会社役員の報酬は、必ずしも労務の提供に対して、その対価として得るものではありません

したがって、取締役の場合、直ちに休業によって収入がなくなる、収入が減少するというわけではありません。

会社役員の報酬には労務提供の対価部分としての報酬と、利益配当の実質を有する報酬があると言われています。

裁判例においても、利益配当部分については、役員としての地位にある限り、休業をしても、原則として役員報酬金額に影響がないと考えられるとして、休業損害は認めれていません。

3 会社役員の休業損害が認められる場合

一方、役員報酬のうち、「労務提供の対価」と認められる部分には、休業損害は認められると考えられています。

具体的な労務提供の対価部分については、会社の規模(同族会社か否か)、利益状況、当該役員の地位・職務内容・年齢、役員報酬の額、他の役員・従業員の職務内容と報酬・給与の額の相違、事故後の当該役員及び他の役員の報酬の報酬額の推移、類似法人の役員の報酬の支給状況などを参考に判断します。

休業損害の計算は、「1日あたりの基礎収入×休業日数」で算出されます。

以上の考慮要素を踏まえて、「1日あたりの基礎収入」を役員報酬の日額から「労務提供の対価」と認められる部分がどれだけあるかという形で評価・算出されることになります。

4 間接損害

交通事故の被害者が会社役員の場合で、交通事故後も役員報酬を全額受け取っていた場合にはどうなるでしょうか。

これまで見たところを前提にすると、休業損害は発生していないように思えます。

しかし、会社役員が交通事故により休業した場合には、会社に収益減少等の損害(間接損害)が生じることがあります。例えば会社の売上が減少した場合や人件費や外注費等が増加した場合等です。

そのような場合には会社役員の休業損害としてではなく、会社自体の損害として賠償を求めることが考えられます。

ただし、間接損害が認められるためには非常に厳格な要件があります。

判例では、

①会社が個人会社といえるような規模であること

②被害にあった会社役員の代わりになるような人材がいないこと

③被害にあった会社役員と会社が経済的に同一の関係にあること

等が要件とされています。

5 最後に

特に、鹿児島のような地方では、都心部と異なり必然的に会社の規模は小規模であったり家族経営であることが多いと思います。

上山法律事務所では、会社役員の休業損害等についてご依頼を受けておりますが、当初、弁護士介入前には、保険会社が一切の休業損害も支払わないという姿勢をとってきたケースも見ています。その後、裁判を経て、上記労務提供の対価と認められる部分の支払いがなされたケースもあります。

会社役員の方で、交通事故の被害に遭われてお困りの方は、上山法律事務所にご相談くだささい。

過失割合と示談

2022-11-04

1 はじめに

交通事故の被害者の方が、損害賠償金をもらう前提として、加害者側の保険会社と交渉するのが一般的だと思います。

その際、最終的に合意が成立すると、示談書を取り交わすと思います。

この示談書ですが、民法上は、裁判外の和解契約といって、れっきとした契約です。

和解契約に至ると、契約した後に、お互い蒸し返すことはできないという意味で、重要な意味があります。

2 物損で示談したとき、人損で違う過失割合を主張できるか

物損と人損の両方が問題となるケースでは、まず先に物損で示談し、症状固定を待ってから人損について示談に至るという流れになると思います。

では、過失割合が問題となるケースで、物損で示談が成立した後に、人損の方で異なる過失割合を主張することは可能でしょうか。

物損で合意した過失割合の内容は、概ね人損でも同じ過失割合で合意に至ることが多いと思います。

しかし、必ずしも物損と同じ過失割合となるわけでなく、被害者側も加害者側も、異なる過失割合を主張すること自体は可能です。

よく見るのは、人損での交渉に納得が行かずに裁判になった場合に、従前と異なる主張が出てくるというケースです。

裁判所は、人損の方で過失割合に合意していない以上、客観的な事故態様を踏まえて判断します。したがって、被害者側としても、有利にも不利にもなる可能性があることを頭に入れて対応しなければなりません。

人身傷害補償保険に加入していれば、過失割合の争点を解消することができることは、これまでのコラムでも述べた通りです

https://kagoshimakoutsujiko.com/%e4%ba%ba%e8%ba%ab%e5%82%b7%e5%ae%b3%e8%a3%9c%e5%84%9f%e4%bf%9d%e9%99%ba%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/

しかし、人身傷害補償保険に加入していない場合は、過失割合が変わり得る可能性があることも踏まえて、損害賠償金について合意するかどうかを決める必要があります。

3 保険会社の事前提示の過失割合に拘束力はあるか

これと少し似た問題として、保険会社が示談交渉の際に、事前に提示した損害賠償金の前提としての過失割合については、拘束力はあるでしょうか。

答えは否です。

保険会社は、「早期円満解決のために譲歩したのであり、訴訟になれば、保険会社の考える過失割合を主張します」という態度で対応してきますし、実際に、示談が成立していない以上は、そのような対応は許されています。

この場合には、客観的な事故態様を基に、裁判所も証拠等を踏まえて過失割合を判断します。

もちろん、事前に保険会社が提示した過失割合は、相応に保険会社として根拠を持ったものでしょうから、極端に変わることは考えにくいですが、私どもが対応している事案では、当初、保険会社は3(被害者)対7(加害者)と提示していたにもかかわらず、訴訟では、7(被害者)対3(加害者)と真逆の過失割合を主張してきたことがあります。

そのため、交渉を打ち切って訴訟を選択する際には、保険会社が事前提示を全てひっくり返してくることがあることを前提に検討する必要があります。

4 最後に

以上見たように、本日は、物損で合意した過失割合や、事前提示で保険会社が示した過失割合に拘束力があるわけではないということをご理解いただきたく投稿しました。

最終的に、交渉で合意するか、交渉を打ち切って訴訟を選択するかの段階において、非常に重要な問題です。

人身傷害補償保険に加入していなければ、まさにこの過失割合の認定によって、得られる損害賠償金の額が大きく異なってくる可能性があります。

過失割合でお困りだったり、決断を迷われていらっしゃる交通事故被害者の方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

時効にかかるのは

2022-10-27

1 はじめに~原則的ルール

交通事故の被害に遭われた方は、相手方と交渉等を行って適切な損害賠償金を受け取ることが重要です。

この損害賠償金ですが、いつまでも永遠に請求ができるわけではありません。

2020年4月1日に民法が改正されました。2020年3月31日以前であれば、事故から3年で時効になるとされていました。2020年4月1日以降は、物的損害は3年、人身損害は5年です。

正確に言うと、生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間は、2020年4月1日時点で消滅時効が完成していない場合に適用があり、具体的には、2017年4月1日以降に発生した交通事故については、民法改正により、人身損害の賠償を請求できる期限は、5年間に延長されることになりました。

ただし、自動車損害賠償保障法や保険法の時効は、民法改正に伴う改正が行われてはおらず、2020年4月1日以降も期限は3年のままなので注意が必要です。

2 後遺障害がある場合等の時効の起算点について

この時効期間ですが、物的損害の事案は比較的解決が早い傾向がありますが、人身損害の場合は、治療が長引いたり、相手方保険会社と上手くコミュニケーションがとれなくなり、事故から長期間が経過しているケースも目にします。

この場合、上記期間を経過したら、時効になるということで諦めるべきなのでしょうか。

例えば、治療を継続して後遺障害が残存した場合、上記時効の期間は、症状固定の日からであるとされています。

したがって、民法改正後の事案で、事故から2年が経過して症状固定した場合には、事故から7年間は時効にはかかりません。

細かく言えば、損害項目には、傷害部分(治療費、交通費、休業損害、入通院慰謝料等)と後遺障害部分(逸失利益、後遺障害慰謝料)に分かれます。このうち、傷害部分は、症状固定を待たずに、事故から5年で時効になるのではないかとも思われます。しかし、通常は傷害部分と後遺障害部分は一緒に示談交渉で話し合いをするのであるから、傷害部分の損害項目も症状固定から5年で時効になるという趣旨の判断をしている裁判例があります。

したがって、後遺障害が残存しているケースの場合には、もちろん、早く示談交渉等を進めるべきではありますが、症状固定から5年というのを一つの目安にしていいと思います。

3 治療費の支払い等の弁済がなされている場合

交通事故の加害者が任意保険に加入している場合、通常、任意保険会社が、医療機関等に対して直接、治療費を支払っている場合が多いかと思います。また、任意保険会社から被害者に対して、正式に示談する前に、内払ということで、休業損害や通院交通費等が支払われることがあります。

これらの支払は、保険約款に基づいて、加害者の同意の下、加害者の損害賠償債務の支払を行っているといえます。したがって、時効は中断(更新)すると解されています。

そのため、事故から3年(民法改正前)あるいは5年(民法改正後)が経過していたとしても、これらの最終の支払日がいつなのか。そこから3年あるいは5年が経過していないかを確認する必要があります。

4 まとめ

以上の通り、単純に事故から時効期間が経過しているから請求ができなくなるわけではありません。

このことに誤解があると、交通事故の被害者の方が、せっかく請求できたはずの損害賠償金を、みすみす放棄することになりかねません。

また、これは付随的な問題ではありますが、事故から長期間が経過しているにもかかわらず時効にかかっていない場合には、それだけ遅延損害金が大きく膨らんでおり、相手方保険会社との交渉において、それを一つの交渉材料として使うこともできると思われます。

事故から長期間が経過しても、諦めないことが重要です。

交通事故の被害に遭われ、事故から長期間が経過している方であっても、上山法律事務所に是非ご相談ください。

休業損害の基礎収入

2022-10-20

1 はじめに

交通事故の被害者の方が、有職者の場合には、事故によって仕事を休んだりした場合、休業損害の請求を検討することになります。

休業損害の計算は、「1日あたりの基礎収入×休業日数」で算出されます。

会社員の場合、本サイトhttps://kagoshima-koutsujiko.com/kaisya_jiei_songai/においても、計算方法を紹介させていただきました。

ここでは、交通事故の被害者の方が、会社員の場合の基礎収入に関する考え方について、もう少し突っ込んだ内容に踏み込んでいきたいと思っています。

まず、交通事故の被害者の方が会社員の場合、多くは「直近3か月分の平均給与」から1日当たりの基礎収入額を算定します。

基礎収入に関して、ベースになるのは「手取り額」ではなく税金や健康保険料を引く前の「総支給額」です。

ここまでは、本サイトの上記ページで記載した通りです。

問題は、この総支給額を前提にどう計算するかです。

2 1日当たりの基礎収入の考え方

まず、事故前3か月の給与を合計して、90日で割るという考え方があります。これがおそらく一番多い計算方法ではないでしょうか。もちろん、間違っているわけではありません。

しかし、細かく考えていくと以下の問題があります。

事故前3か月の給与を合計するという点に関して、年収ベースで見たときには、賞与が反映されていないのではないかという問題があります。

場合によっては、前年度の源泉徴収票の総支給額を365日で割り算した方が高くなるということもあると思います。

また、90日で割るという点ですが、これは、もともと休日であった日も含んで平均額を算出することになります。休日を含まない実労働日1日当たりの平均額とすれば、90日で割るより日額は高く算出されます。

以上の通り、計算方法によって違いが出ることを頭に入れておく必要があります。

3 休業日数について

基礎収入のところで、休日を含まない実労働日1日当たりの平均額で基礎収入を算出した場合には、実際の休業日数を乗じることになると思います。

一方、基礎収入のところで、休日であった日も含んで平均額を算出した場合には、休業期間をもって休業日数と算出することになると思います(源泉徴収票の年収を365日で割るのも同様の考え方になると思われます)。

休日を休日であった日も含んで平均額を算出した場合に、実際の休業日数を乗じると、収入日額が低くなり、休業損害が過少になってしまいます。

4 まとめ

交通事故の被害者が、事故前の具体的な稼働日数、支払いを受けた給与の金額を認定できる場合には上記の差異を考慮して計算しないといけません。

日給制で働いている方の場合にはなおさらです。

最近、当事務所では、交通事故の被害者の方が、保険会社から内払のあった休業損害の考え方に疑問を持っているという形で相談に来られたケースが続きました。

世の中には、疑問を持たずに示談してしまっているケースもあると思います。

休業損害を含む示談交渉でお困りの場合、是非、上山法律事務所にご相談ください。

歩行者同士の事故

2022-10-13

1 はじめに

交通事故は、自動車事故に限られません。

自転車と歩行者、歩行者同士の事故等も、広い意味では交通事故に当たります。

これらの中でも、本日は、歩行者同士の事故について、書いて行きます。

当事務所でも、歩行者同士の交通事故については、何度か相談を受け、正式にご依頼を受けて対応したこともあります。

歩行者同士の交通事故は、被害者が高齢者である場合が多く、交通事故ほどの衝撃や事故態様ではないにしても、決して簡単には行かないことが多いです。

2 保険未加入のケースが多い

交通事故の中でも、歩行者同士の事故の場合には、自動車事故とは異なり、保険を利用することができないことが多い印象です。

もちろん、加害者側が傷害保険に加入していれば、利用できる可能性はあるのですが、一般的には、傷害保険の加入率はまだまだ低いかなと感じています。

自動車事故と異なって、自賠責という制度もありません。

したがって、被害者としては、保険からの支払いが望めない可能性が高いことから、加害者から直接支払ってもらう必要があります。

逆に、加害者としては、全て手出しになる可能性がある前提で、交渉に臨む必要が出てきます。

3 後遺障害の認定機関がない

前述したように、被害者は高齢者が多い印象です。私どもで対応した事件は、歩行中に衝突し、倒れ方が悪くて骨折したというものでした、被害者自身にも骨粗しょう症があったことから、被害が拡大したという側面も否定できず、治療期間も長期化しました。

最終的に、後遺障害が残存していると考えられるケースでも、自動車事故の場合のように、自賠責に後遺障害の認定を求めることができません。

そのため、現在の症状から、自賠責の基準を利用して評価していくということにならざるを得ません。

4 過失相殺も問題になりやすい

歩行者同士の交通事故の場合、自動車事故の追突やセンターラインオーバーなどと異なり、過失割合が0対100になるケースは少ないと思います。

そうすると、過失割合を検討する必要がありますが、自動車事故の場合のように寄って立てるものがありません。

判例の蓄積も少ないと思います。

5 損害の拡大と素因減額を検討する必要がある

損害の算定においても、事故の被害者が高齢の場合には、事故態様から見た場合に症状が重いことも多いことから、どこまでを事故が原因だと考えるか、専門的な言い方をすると、素因減額をどうするかという点も問題になってきます。

6 まとめ

以上のような事情から、歩行者同士の事故は、交通事故ほどの事故の衝撃が無かったとしても、簡単には行きません。

交通事故の被害者の側からすれば、保険未加入の状況が多いと、損害賠償金の回収にリスクが生じます。

また、後遺障害、過失割合、素因減額といった問題になりやすい争点について、評価の基準に明確なものがありません。

そのため、示談交渉は非常に難しい印象を受けます。

当事務所では、歩行者同士の交通事故の解決事例があります。

お困りの際には、是非、上山法律事務所にお問い合わせください。

弁護士費用と遅延損害金

2022-09-15

1 はじめに

交通事故の被害者にとって、適正な損害賠償を受けることは非常に重要です。

損害賠償の項目については、治療費、通院交通費、休業損害、逸失利益、慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)といったものが典型的で、これらについては、何となく聞いたことがあったり、イメージがしやすいと思います。

症状固定によって(事案によっては後遺障害認定の後)、損害が確定し、保険会社と示談交渉に入ります。

その際、保険会社も、上記損害項目については、裁判基準に照らして満額を支払うかは別ですが、交渉の土俵には挙げてきます。

しかし、保険会社は、弁護士費用と遅延損害金という項目については、示談交渉の段階では一切応じないのが通例です。

2 弁護士費用とは

一般に、日本では、紛争解決のために弁護士を選任することが強制されているわけではありません。そのため、ご自身が依頼された弁護士の費用は、ご自身で負担するのが原則です。

しかし、交通事故や医療過誤といった事故を原因とした損害賠償請求(不法行為に基づく損害賠償請求)の場合、実務的には、請求額に10%の弁護士費用を上乗せして請求することが広く行われています。

正確には、訴訟を提起した段階では、原告(被害者)側が請求額の10%を上乗せしますが、裁判所は、判決で認容した額の10%を認めることが多いです。

交通事故の場合、弁護士特約という商品が普及しており、これを利用したとしても同様です。

しかし、示談交渉の段階では、保険会社がこの損害項目を負担することはまずありません。

裁判になると、一般的には、裁判官は和解による解決を探るものですが、和解の段階では、後述する遅延損害金と合わせて、調整金という名目で一定程度を上乗せすることは行われていますが、10%を認めるのは、和解ができずに判決に至った場合が基本になります。

3 遅延損害金とは

一般に、交通事故等の不法行為に基づく損害賠償請求の場合、不法行為の日(事故の日)から損害賠償請求権が発生し、遅滞に陥っている考え方が取られています。

そのため、賠償額の全額が支払われるまで、元金に対する遅延損害金が発生しています。2020年4月以前の事故の場合には年利5%、同月以降は年利3%です。

加害者が事故に誠実に向き合わずに放置した場合はもちろんですが、保険会社との示談交渉が長引いているといった理由を問わず、損害賠償がなされていなければ、遅延損害金は発生しています。

しかし、これも示談交渉の段階では、保険会社は一切負担しません。

裁判になった場合の扱いは、弁護士費用と同じように、和解の段階では調整金名目で、判決になった場合には満額認められるという処理が基本になります。

4 どうすべきか

弁護士費用と遅延損害金について、保険会社が示談交渉の段階では一切認めないことは既にお伝えしました。

しかし、これは見過ごせない損害項目です。たとえば、事故から1年経過していれば、13%上乗せになります。改正前の事故で、事故から3年が経過していれば25%上乗せになります。

もちろん、これら満額が認められるのは、和解ができず判決に至った場合ですが、和解の段階でも一定程度は考慮されますし、もともとの損害額が大きければ、考慮される額も大きくなります。

したがって、後遺障害が残存したケースや、死亡事故の場合等の、損害額が大きくなる事故の場合には、弁護士費用と遅延損害金の上乗せを検討して方針を決めることになると思います。

意外と知られていない問題だと思いますので、交通事故の被害者の方は、是非、頭に入れておいていただけましたらと思います。

上山法律事務所では、損害賠償の回収可能額の見込みを踏まえて、最適な方針を提案するよう努めております。交通事故でお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0992277711 問い合わせバナー 無料法律相談について