Archive for the ‘後遺障害’ Category
可動域制限の数値
1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。
例えば、交通事故によって生じた怪我により、上肢あるいは下肢に可動域制限が残った場合、後遺障害の申請を行うことを検討することになると思います。
2 可動域制限
以下の投稿でもご紹介している通り、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている場合には9級、3/4以下に制限されている場合には12級といった形で、後遺障害等級が認定されます。
しかし、実際に、主治医から後遺障害診断書を作成してもらった結果、診断書内の数値を見ただけでは、よくわからないことがあります。
例えば、角度の計測は5°単位となっていますが、そうでないものもあります。
左右いずれも骨折等の傷害を負った場合には、正常値との比較で検討することもあると思いますが、片方のみの場合には、主治医がどうしてそのような数値になったのか、起点をどうしているのか等も確認しなければならないこともあります。
また、リハビリ前と後でも、数値は違ってくると思います。
以前、以下の投稿でも記載していますので、ご参照ください。
いずれにしても、後遺障害診断書が作成されたら、一度、数字をきちんと確認し、分からない場合には主治医に確認する必要があります。
3 まとめ
以上見たように、上山法律事務所では多くの後遺障害申請に関与し、また、後遺障害の申請に当たり、的確なアドバイスができるよう努力しております。
お困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。
既存障害がある場合
1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。
示談交渉は、損害が確定した後に行うのが一般的であり、お怪我を負われて後遺障害が残存した場合には、後遺障害の申請を行った後に、示談交渉を行うことになります。
例えば、後遺障害の申請を行う際、従前にも交通事故に遭い、後遺障害の認定がなされている場合には、どうなるのでしょうか。
2 基本的な考え方
自賠法施行令は、「既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによって同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあつた後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。」と定めています。
既存障害のある方が、今回の交通事故によって同一部位に後遺障害が残った場合は、既存障害の程度を加重した場合に限って、加重した部分(「加重障害」といいます。)についてのみ自賠責保険金を支払うという意味です。
例えば、既存障害として頚部に14級の障害を負っていた方が、今回の交通事故によって、同様に頚部12級の障害を負った場合、今回の後遺障害12級の自賠責保険金から既存障害の14級の自賠責保険金を差し引いた額が支払われることになります。
しかし、裁判所は、自賠責保険における認定を重視しつつも、独自に、既存障害の有無や程度を踏まえて判断します。
例えば、14級相当の神経症状は、労働能力喪失期間が5年、12級相当の神経症状は同じく10年とされています。
そのため、既存障害が発生した時期から今回の交通事故までに上記期間が経過している場合、既存障害はすでに治癒しているとして、今回の後遺障害への影響はないという主張も十分に成り立ちます。
現に、私どもは、裁判でそのような内容の和解を勝ち取ったこともあります。
一般論として、自賠責よりも裁判所の方が柔軟だと言う意見もあります。
3 まとめ
以上見たように、既存障害のあるケースの場合は、それを前提とするか、あるいは無関係として交渉すべきなのか、非常に判断が難しいケースが多いです。
お困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。
後遺障害の申請のための治療継続
1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。
交通事故によってお怪我を負った場合、後遺障害が残存すれば、後遺障害の認定結果が出てから、後遺障害が残存しなくても、いわゆる症状固定により通院が終了してから、損害を確定させて示談交渉に入ります。
つまり、後遺障害が残存していると考える場合には、その申請を行う必要があります。
2 通院期間はどの程度必要と言われているか
一番典型的なむちうち症状(14級を狙う場合)を例にとってお話をすると、概ね、事故から3か月~6か月くらいが通院期間とされています。
後遺障害の認定のためには、6か月程度の通院期間が必要とされています。
そのため、保険会社が3か月とか、6か月を経過する前に治療費を打ち切ると言ってきた場合には、健康保険に切り替えて、3割を自費で負担して通院を継続する必要があります。
しかし、ここで、問題が生じることがあります。
3 医師側とコミュニケーションがとりにくい場合
主治医が、後遺障害の申請の実務に慣れていなかったり、むちうち診療に好意的でない場合があります。
例えば、保険会社が治療費を打ち切った場合、その時点が症状固定だと考えている医師がいます。症状固定かどうかは、保険会社が決めるのではなく、医学的な立場から医師が判断すべき事柄です。私どもが依頼を受けた案件では、打ち切り後に数か月、自費で治療を継続して後遺障害診断書を作成してもらった際に、保険会社が治療費を打ち切った時点を症状固定だと判断を変えない医師がいました(そうであるなら、何故、継続して治療をするのか分かりませんし、その依頼者の事案では、保険会社が治療費を打ち切った後に、治療方針を変更したという案件でした)。
症状固定の時期により、請求できる治療費や慰謝料の額に影響があります。
もっとひどいケースでは、むちうち診療に好意的でなく、「うちの病院はむちうちは3か月で治療が終了します」等といい、明らかに依頼者が治療の継続を希望しており、保険会社もまだ数か月間、治療を継続しても構わないと言ってるにもかかわらず、医師の方が治療を中止するということもあります。
このような場合には、早めに転院をすることをお勧めします。
結果、その医師に後遺障害診断書の作成をお願いしても、どのような内容になるかは想像がつくからです。
後遺障害診断書の自覚症状の欄を白紙で作成するという医師にも会ったことがあります。他覚的所見欄以外は、単なる患者の主訴であり意味がないという考えのようです。
しかし、むちうちでは、自覚症状の一貫性が重要であることもあります。
4 まとめ
以上見たように、後遺障害の申請に当たり、通院期間・経過は重要です。
しかし、病院の側とのコミュニケーションが取れない場合にもあります。
そのような状況の中でも、何とか最善策を見つけないといけません。
お困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。
後遺障害結果に不満がある場合
1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。
示談交渉は、損害が確定した後に行うのが一般的であり、お怪我を負われて後遺障害が残存した場合には、後遺障害の申請を行った後に、示談交渉を行うことになります。
後遺障害の申請を行い、納得の行く結果を得られた場合には問題はありませんが、不満のある場合には、不服申し立ての手続きがあります。
2 後遺障害結果に不満な場合の手続き
① 調査事務所に異議申し立てを行う方法
まず、認定結果に不満な場合には、認定結果を出した自賠責調査事務所(以下、「調査事務所」といいます。)に不服申し立てを行うという方法があります。
これは、時効期間内であれば、何度でも可能ですが、認定結果を覆すには、新たな証拠資料等が必要になるのが一般的です。
② 紛争処理機構に調停を申し立てる方法
次に、一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構(以下、「紛争処理機構」といいます。)に調停の申し立てを行う方法があります。
紛争これは、一度きりしか使うことができないため、この結果にも不満が残った場合には、裁判の中で主張するしかなくなります。
ただ、当事務所の感覚では、補充的に新たな証拠資料等を揃えなくても、認定結果が覆ったケースもあり、調査事務所への異議申し立てよりも認められやすい印象です。
現実問題としては、異議申し立ては何度でも可能ということであっても、複数行うということは無いと思いますので、1度だけ行うということであれば、当事務所では紛争処理機構をおすすめすることも多くあります。
③ 訴訟で争う方法
異議申し立て(①)、調停申し立て(②)以外では、訴訟で争う方法があります。
ただ、裁判所は、調査事務所や紛争処理機構の後遺障害認定結果を、一応、尊重する姿勢でいることが多く、訴訟の中で覆すには相当な努力が必要となります。
3 まとめ
以上見たように、後遺障害結果に不満がある場合に、不服申し立てを行う方法は複数あります。
上山法律事務所では、当初の後遺障害結果を覆した事例も数多く担当しています。
お困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。
可動域制限と測定方法
1 はじめに
前回と同様、今回も、後遺障害申請についてお話します。
おさらいですが、交通事故の被害者の方が、後遺障害の申請に当たっては、相当程度の通院を継続し、症状固定となった後に、主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。その後、調査事務所で判断がなされます。
労災の場合と異なり、一部を除いて面談等が実施されることはありませんので、交通事故の場合には、この後遺障害診断書の内容が重要であることは、このコラムの中でも何度もお伝えしてきました。
2 可動域制限
交通事故の被害に遭われた方の中でも、むちうちと並んで多く見受けるのが、整形外科領域の可動域制限です。
特に骨折された方の場合、この可動域制限が一番と言っていいほど問題となると思います。
さて、この可動域制限ですが、正常値と比較して、どの程度、可動域が制限されたのか、多動値ないし自動値という数値を基に評価されます。
自動値は、対象者が、自力で関節を動かした場合の可動域のことをいいます。
他動値は、他人(主治医など)が、手を添えて関節を動かした場合のことを言います。
関節可動域の測定について、自動値と他動値の違いは、要は、自力で動かすか他人が動かすかという違いになります。
そして、関節可動域の測定は、後遺障害診断をするにあたっては、原則として他動値で判断することになります。
どのくらい可動域が制限されると何級と評価されるのかは、以下のページで明記しています。
4分の1制限されると12級
2分の1制限されると10級
というのが割合としては多い印象です。
3 測定方法
以上は、これまでの基礎知識をまとめました。
本日は、この後遺障害診断書を作成してもらうに当たって、注意が必要なケースを紹介します。
これまでお読みいただいた方には分かると思いますが、重要なのは後遺障害診断書にどのような数値が記載されているかです。
測定方法等が問題となります。
他動値の測り方について、測定する医師によっても、どこまで力を入れて測るかといった違いはあると思います。
それよりも重要なのは、どのようなシチュエーションで測るかです。
もちろん、これは、日常生活において、どの程度、可動域が制限されているかを測るものであるため、リハビリ治療等を受けていない、いわば「素」の状態の可動域が測られていなければなりません。
しかし、中には、リハビリ治療を受けた直後に、可動域の測定がされているケースもあります。これですと、交通事故の被害に遭われた方は、リハビリを受けて、筋肉の硬さもほぐれている状態で測定されていることになりますから、「素」の状態よりも可動域制限は緩和されている状態であると思います。
後遺障害の認定がなされるか、あるいは、より上位の認定がなされるか微妙なケースでは、このように、どのようなシチュエーションで測定されているかによって結論が変わってくる可能性があります。
最近、当事務所で依頼を受けたケースでは、上記のようにリハビリを受けた後に測定されていることから、「素」の状態より良い検査数値が出ていました。しかし、打ち合わせて事情をお聞きしたら、本来はもっと状態は悪いということでしたので、再度、リハビリをする前の状態で検査をしてもらいました。
おそらく、当初の検査数値では、後遺障害は認定されなかったのではないか、あるいは12級ではなく、神経症状として14級が認定されていたのではないかと思います。
4 まとめ
このように、交通事故の被害者の方が、適切な後遺障害の認定を受けるためには、相手方保険会社からの指示に従って主治医に診断書を作成してもらうだけでは不十分です。
特に可動域制限であれば、どのような測定方法で、どのような数値が出ているのか、あるいは、その可動域制限が生じた原因は何かまで掘り下げて検討する必要があります。
後遺障害の申請には、弁護士のアドバイスが重要です。
お困りの方は、是非、経験豊富な上山法律事務所にご相談ください。
通院に空白期間がある場合の後遺障害申請
1 はじめに
交通事故の被害者の方が、後遺障害の申請に当たっては、相当程度の通院を継続し、症状固定となった後に、主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。その後、調査事務所で判断がなされます。
労災の場合と異なり、一部を除いて面談等が実施されることはありませんので、交通事故の場合には、この後遺障害診断書の内容が重要であることは、このコラムの中でも何度もお伝えしてきました。
本日は、この後遺障害診断書を作成してもらい当たって、注意が必要なケースを紹介します。
2 整骨院治療がほとんどの場合
交通事故の被害に遭われた方の中には、日中に整形外科に通院できる時間的な余裕がなく、整骨院治療をメインにされている方もたくさんいらっしゃると思います。
整骨院治療については、保険会社の打ち切りが早いことや、後から治療費の相当性等が争われる可能性があることは、これまでコラムに記載してきました。
しかし、もう1点重要なこととして、後遺障害診断書を主治医に作成してもらう際のことがあります。
もちろん、整骨院では、後遺障害診断書を作成してもらえることはありませんし、基本的には、整形外科の主治医と整骨院が、患者の症状を密に共有しているということも無いと思います。
そのため、あまりに整形外科への通院に感覚が空いていると、主治医に後遺障害診断書の作成をお願いした際に、作成を渋られたり、詳細な内容の後遺障害診断書を作成してもらえない可能性があります。
このようなリスクもあるので、定期的な整形外科への通院は重要な問題です。
3 診療科目が異なる病院に通院している場合
また、事故により、複数の部位に傷害を負うということもあると思います。
例えば、骨折は整形外科、頭部は脳神経外科、肺は呼吸器外科といった形で、診療科目毎に分かれて診察を受けている場合、複数の病院に通院されているというころが起こります。
この場合、特定の診療科目については、長期間通院しないまま症状固定になるということもあります。
当事務所で最近担当したケースでは、事故直後は総合病院で、骨折や肺について診察を受けていたが、退院後は骨折の予後やリハビリを別の整形外科の病院に通院して行っていたということがありました。
しかし、依頼者の方は、肺についても強い違和感をお持ちでした。
骨折について症状固定になった後、現在通院していた病院に全体の後遺障害診断書の作成を依頼しましたが、肺については専門外ということで、当初の総合病院に依頼することを勧められました。
ただ、総合病院については長く通院をしていなかったため、肺だけの後遺障害診断書の作成を依頼しても、経緯が分からなかったと思われます。
そのため、当事務所の弁護士が同席させていただき、医師に経緯や事情を説明の上、再度の検査を実施してもらい、後遺障害診断書を作成してもらいました。
結果として、肺の部位の後遺障害が上位等級となって後遺障害が認定されました。
もし、弁護士に依頼していなかった場合、整形外科に肺に関する後遺障害診断書の作成を断られた場合、総合病院で改めて取り付けることを諦めてしまったかもしれませんし、総合病院に上手く経緯を伝えられなかったものと思います。
4 まとめ
以上のように、交通事故の被害者の方にとって、後遺障害診断書は、後遺障害認定にとって非常に重要な意味を持ちます。
依頼をされる医師の側にも、経験の差がありますし(医師としての診察の経験ではなく、交通事故の後遺障害診断書の作成においてという意味です)、空白のあるケースでは、弁護士が間に入ることでスムーズに行くことがあります。
交通事故の被害に遭われ、後遺障害申請を検討されている方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。
むちうち以外でも14級9号
1 14級9号とは
交通事故の被害に遭われ、後遺症に悩んでいる方も多いと思います。
後遺障害は1級から14級の14等級に分かれています。
このうち、14級9号ですが、基準としては、「局部に神経症状を残すもの」という要件になっています。
典型的には、むちうち症が有名です。むちうち症の場合、神経根の圧迫が画像上明確ではない場合には、14級9号か非該当と判断されることになります。
さて、この14級9号ですが、活躍の場面は非常に多いです。
整形外科領域での説明がつかないケースであっても、症状が継続して残存している場合には、14級9号(場合によっては12級13号)が認定されることがあります。
2 可動域制限の場合
例えば、交通事故によって上肢や下肢を骨折し、これにより可動域に制限が生じた場合、健康な側と比較して4分の3に制限されたときは、12級6号あるいは7号が認定されます。同じく2分の1に制限された場合、10級10号あるいは11号が認定されます。この可動域の制限は、可動域に制限がかかった部位に、器質的損傷(身体の組織そのものに生じた損傷のこと)が見られる場合に認定されます。
逆に言えば、可動域の制限が、これ以外の原因で生じた場合には整形外科領域の12級6号ないし7号あるいは、10級10号ないし11号の後遺障害とは認められません。
交通事故により生じた痛みから、関節が拘縮して可動域が制限されたといったケースが典型的です。この場合には、可動域の制限が、健康な側と比較して4分の3や2分の1に制限されたとしても、それは神経の症状として判断されることになります。
実はこの差は大きいです。
特に、逸失利益の算定に大きな違いが出ます。
例えば、整形外科領域の12級6号あるいは7号の場合、67歳まで就労可能という計算で算出することが多いのですが、神経症状として把握された場合、12級13号だと10年、14級9号だと5年という形で制限される可能性があります。若い方の場合、非常に大きな額の差が出ることになります。
そのため、可動域の制限が認められるケースの場合、その原因とった部位に器質的損傷が無いか、医師の画像の読影によっても結論が左右される可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
実際に、当事務所で担当した事案ですが、最初の後遺障害認定では非該当とされましたが、医師の読影に関する意見書を添付して異議申し立てをしたところ、12級6号が認定されたケースもあります。
3 可動域制限が無い場合
逆に、骨折したけれども、経過が良好で、可動域の制限等、整形外科の領域では特段の後遺障害が残存していないケースもあります。若い方の場合、治りも良いため、決して珍しくはないと思います。
このようなケースでも、例えば、しびれが残って長時間同じ動作ができないといった自覚症状は残っていることもあると思います。
こうしたケースでも、諦めないことが重要です。
冒頭で記載したように、14級9号に認定される余地は残っています。
そのためには、後遺障害診断書に自覚症状を詳細に記載してもらい、骨折等の器質的損傷と結び付けた主張を行う必要があります。
自覚症状のみというケースは難しいのですが、当事務所で担当した事案の中でも、最初の後遺障害認定では非該当とされても、異議申し立てや紛争処理機構に調停申し立てをした場合に、14級9号が認められたケースも経験しています。
したがって、骨折を負うくらいの事故だった場合には、整形外科領域に後遺障害が残存していなかったとしても、諦めず後遺障害申請の途を検討した方がよいケースも多々あるものと思われます。
後遺障害の申請でお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。
高次脳機能障害の後遺障害申請
1 はじめに
交通事故の被害者向けに、高次脳機能障害の一般的な知識は、当HPのhttps://kagoshima-koutsujiko.com/koujinou/で記載した通りです。
自賠責でも、労災保険の基準も参考にして判断されていますが、もし、交通事故の被害に遭われ、ご本人やご家族の方が高次脳機能障害と診断された場合、実際に後遺障害等級が何級くらいになりそうか微妙なケースもあると思います。
今回は、実際に当事務所がご依頼をいただいたケースを基に、後遺障害申請や異議申し立てについてご説明しています。
2 後遺障害申請
大前提として、高次脳機能障害の後遺障害認定を得るためには、以下の3つの要件を満たしている必要があります。
①脳損傷が確認できること
②事故後に意識障害があること
③認知障害、行動障害、人格変化の症状があること
①については、CTやMRIといった画像検査
②については「頭部外傷後の意識障害についての所見」
で証明していきます。
ここまでは、当HPのhttps://kagoshima-koutsujiko.com/koujinou/でも記載した通りです。
高次脳機能障害の程度を見極める上では、③が重要です。
③については、主に家族や介護者に「日常生活状況報告」という書面を作成してもらうことになります。学童・学生の場合には、「学校生活の状況報告」という書面もあります。
しかし、これだけでは書ききれないエピソードといったものもたくさんあると思います。
その場合には、別途、任意の書式で構いませんが、「陳述書」といった形で、家族や介護者の方で言いたいことをさらに追加・整理したりする方法があります。陳述書の作成を職場の同僚などにお願いすることもあります。
3 当事務所の担当した事例
当事務所で担当した事例では、当初、高次脳機能障害3級と認定された事案がありました。
既に、CTやMRIといった画像、「頭部外傷後の意識障害についての所見」、ご家族の方が作成した詳細な「日常生活状況報告」を提出していました。
しかし、自賠責には、依頼者の状況を十分に理解してもらえませんでした。
そこで、異議申し立てを行いました。
2級と3級との間には、大きな違いがあります。
例えば、損害賠償の領域では、将来の介護費用が原則として認められるとされているか否かの違いがあります。3級以下の等級であっても事案によって認められているケースはありますが、2級だと原則として認められるという前提になっています。この損害項目だけでも、請求する損害賠償額が大きく異なっています。
また、被害者の方の生活状況という観点で見たときには、労災の基準の「補足的な考え方」の欄をご覧いただければ分かるように、2級の場合、「一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている」という記載があります。
当事務所で担当していた事案では、被害者の方は、一人で外出することができるような状況ではなく、認知障害も進んでおり、排泄も思うようにできないような容態でした。
そこで、具体的にイメージがしやすいように、ご家族の方に動画や写真を撮影してもらい、その状況を陳述書で補足的に説明することによって明らかにしたというケースがあります。
4 まとめ
自賠責の場合、労災と異なり、面談なしでの書面審査になります。
そのため、どうしても、書面ではイメージが付かないこともあると思います。
当事務所では、上記のように動画を提出することによって、具体的に依頼者の方のイメージを掴んでもらう工夫をしました。
判断するサイドの方々は、ご家族と一緒に住んでいるわけでもなく、また、学校や職場等で
顔を合わせたりするわけでもありません。そのため、日常生活の状況をどう理解してもらうのか、自賠責が用意している書式で、本当に被害者の方の状況を正しく伝えることができているのかというのを、しっかり考える必要があると思います。
工夫の仕方は、上記のような動画に限られないと思いますが、事案に応じた最善策を検討することが重要です。
高次脳機能障害は、1,2,3,5,7,9級と、障害等級も重いものです。その上、3級までは、2級刻みになっているため、適切に障害の程度を把握してもらい、等級に反映させることができなければ、請求できる損害賠償額に大きな違いが生じます。
高次脳機能障害その他後遺障害の等級申請等でお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。
症状固定の適切なタイミング
1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方で、後遺症が残った場合、後遺障害の等級認定手続を行う必要があります。
その前提として、症状固定とされた後に、主治医から後遺障害診断書を作成してもらわないといけません。
後遺障害の認定手続のバリエーションについては、このコラムで以前記載していますが、今回は、その前段階のことをお話します。
2 一般的な症状固定時期
一般に、事故によってむち打ち症となった場合には、2~3か月くらいで保険会社が治療費を打ち切るという話が出てきますが、後遺障害の等級認定を勝ち取るためには、6か月程度の通院実績が必要であると言われています。
骨折の場合、状態にもよりますが、これまでの私どもの経験で行きますと、ボルトを入れて抜去するような事案であると、ボルトを抜いてリハビリを経て、概ね1年程度で症状固定になり、そうでないケースの場合は6カ月から1年くらいの印象です。
脳の障害の場合には、1年から1年半程度、症状によってはさらに長期間を経て症状固定となっていると思われます。
これらは目安ではありますが、症状固定までの期間は、治療費を損害として請求できる可能性が高く、症状固定後の治療費は原則として請求ができないという棲み分けの意味でも、症状固定時期は重要です。
3 症状固定時期は遅らせた方がよい?
では、症状固定時期は、できる限り遅らせた方が有利なのでしょうか。
後遺障害の等級認定に当たっては、医師の作成した後遺障害診断書と画像を踏まえて判断されます。労災の場合は面談等をして地方医がもう少し丁寧に判断しますが、自賠責の場合は、書面審査が一般的です。
したがって、この後遺障害診断書にどのように書かれるかがポイントになります。
定期的に通院している場合、患者の側から症状固定時期について希望を伝えると、主治医の先生も親身に検討してくれることは多いのではないでしょうか。
しかし、症状固定時期を遅らせた結果、リハビリ効果が出て、症状が良くなるということはあり得ます。そうすると、例えば、可動域の制限が問題となるようなケースの場合、ある時期に症状固定と判断されていれば後遺障害が認定されていた可能性、あるいは、より上位の等級が認定されていた可能性があるのに、症状固定時期を長くした結果、後遺障害が認定されなかった、あるいは、下位の等級が認定されてしまったということが生じ得ます。
もちろん、交通事故の被害者の方からすれば、お体の具体が良くなったということなので、それはそれで喜ばしいことなのですが、賠償の観点からすれば、損をしているという見方もできます。症状固定という言葉が、医学的には症状の改善がない状態という意味であるとすれば、先ほどの「ある時期」の例は、まだ症状固定ではない時期であったともいえるかもしれません。
しかし、タイミングによっては上記のような差異が生じる可能性があることは、頭に入れなければなりません。
4 まとめ
当事務所では、交通事故の被害に遭われた方の症状を定期的に把握し、どの時点で後遺障害の申請に入るか、症状固定のタイミングもアドバイスします。
後遺障害診断書の作成に当たっては、主治医とのコミュニケーションを図る努力もしています(面談をお願いしたり、後遺障害診断書作成に当たって着目して欲しい点について、お手紙を送付したりしています)。
交通事故の被害に遭われ、後遺障害認定を考えていらっしゃる方は、是非、一度、上山法律事務所にご相談ください。
後遺障害の認定について
1 後遺障害認定手続の種類
交通事故の被害者が、治療を継続した結果、症状固定となり後遺障害が残った場合、後遺障害の申 請及び認定については、以下の方法があります。
① 自ら自賠責に被害者請求を行う
② 相手方保険会社に事前認定手続きをとってもらう
③ 自らが加入する人身障害補償保険に事前認定手続きをとってもらう
これら3つの方法は手続の仕方の差異であり、自賠責調査事務所が後遺障害の認定を行います(JAだけは別の組織を持っていますが、JAの方が一番判断が厳しい印象です)。
これら3つの方法を比較すると、①については、必要書類を自分で収集する手間がありますが、自分の提出したい書類で判断してもらえます。②③については、保険会社側が大半の資料を揃えるので、何を提出されたかが分からないという問題があります。時に、保険会社側が被害者に不利な意見書を付けて提出しているのではないかという話もあります(私どもの方で、この点を保険会社に確認したことがありますが、その際、保険会社は、よほどのことが無い限り、そのようなことはないという言い方でした…)
後遺障害の認定という問題で言えば、どの方法をとっても結論は変わらないという意見もあれば、やはり被害者請求の方がいいのではないかという意見もあります。当事務所としては、それよりも後遺障害診断書の出来が重要と考えておりまして、実際にどの方法をとっても大差は無いと考えています(特に、整形外科の領域(可動域制限等)が問題となる事案では、後遺障害診断書に数字で記載されますので、動かしようがないと思います)。
2 労災
さて、上記で述べたことは一般的な交通事故の案件の場合です。
交通事故の被害者に遭われた方が、勤務中であったり、通勤中であった場合、労災が利用できる場合があります。その場合には、労災に後遺障害の申請を行うこともできます。
一般論としてですが、労災の後遺障害認定は、自賠責調査事務所よりも後遺障害認定については緩やかな印象があります。特に、審査についても丁寧で、自賠責調査事務所の場合は、いわゆる醜状障害と言われる後遺障害が問題となる場合には面談を行いますが、それ以外では面談はありません。
労災の場合、原則、地方医と呼ばれる労災担当の医師と面談があります。また、治療経過や症状についても、詳細に調査がなれています。
3 どちらの手続きを使ったらいいか
以上のような事情があるため、当事務所では、交通事故の被害者の方で、労災が利用できる事案の場合、まずは労災から後遺障害認定を得るようにしています。
ただ、保険会社は、交通事故事案の場合には、労災の認定だけでは示談交渉に応じず、調査事務所の結果を経てから交渉に臨むという姿勢をとってきます。
そのため、労災を経由する分、どうしても交渉に入るまでに時間が掛かってしまいます。
ただ、労災の認定結果の資料を自賠責調査事務所にも使えるため、自賠責でも同様の判断をしてもらえる可能性は高まると思います。
先日、労災で後遺障害12級の認定を得ていたのですが、自賠責では14級という方の依頼を受けました。自賠責では、労災で利用した資料の全てを提出していたわけではないため、当事務所で異議申し立てを行ったところ、自賠責も異議が認められて12級となりました。
4 それでも労災はメリットがある
ただ、結果として、労災と自賠責で異なる判断が出てしまう可能性もあります。その場合、裁判所は、自賠責の判断を優先する傾向があります。
理由は様々あるのですが、労災が明確な根拠を示さずに自賠責より上位等級を認定していると判断 している場合が多いのではないかと思っています。
では、結果的に裁判所が自賠責を優先するなら、このような労災を経由してから自賠責に後遺障害申請を行うという手順が無駄なのかというと、そうでありません。
労災の場合、後遺障害が認定された場合には、特別支給金というものが支給されます(休業補償給付や遺族補償給付でも同様です)。
これは、損害賠償の場面では損益相殺の対象になりません。したがって、これらの支給金は、実際に加害者に損害賠償をする際には差し引きされずに丸まるもらえることができることになります。
まとめると、労災が利用できる事案では、後遺障害がより上位の等級になる余地があること、特別支給金を得られることがから、労災に後遺障害の申請を行うことをお勧めしています。
これらは非常に専門的なお話になりますので、交通事故の被害に遭われた方で、後遺障害認定を考えていらっしゃる方は、是非、上山法律事務所にお問い合わせください。