Archive for the ‘後遺障害’ Category

後遺障害の検査

2024-02-16

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償金を獲得するために努めるのが一般的です。

後遺障害が残存する状態の場合、相手方の任意保険会社を通じて事前認定という形か、あるいは、自ら被害者請求という形で、後遺障害の申請を行います。

以前、このコラムでも整理していますので、ご確認ください。

その際、機能障害という形で可動域の制限が問題となる場合があります。

以前、以下の投稿を行っていますが、最近、改めて気になったことがありましたので、再度、同内容を投稿します。

https://kagoshima-koutsujiko.com/wp-admin/post.php?post=540&action=edit

2 可動域制限の検査方法

この可動域制限ですが、正常値と比較して、どの程度、可動域が制限されたのか、多動値ないし自動値という数値を基に評価されます。

自動値は、対象者が、自力で関節を動かした場合の可動域のことをいいます。

他動値は、他人(主治医など)が、手を添えて関節を動かした場合のことを言います。

重要なのは他動値になりますが、どのようなシチュエーションで測るかが重要です。

非常に重要なため、上記の投稿を繰り返します。

上記投稿では、リハビリ治療等を受けていない、いわば「素」の状態の可動域が測られていなければなりませんとお伝えしました。

リハビリ治療を受けた直後に、可動域の測定がされていると、筋肉の硬さもほぐれている状態で測定されていることになりますから、「素」の状態よりも可動域制限は緩和されている状態であると思います。

3 薬を飲んでいた場合

しかし、リハビリ治療を受けていない場合に限定されません。

最近遭遇した事件では、鎮痛剤を定期的に飲んでいる方が、薬を飲んだ後に検査を受けていたことがありました。これも、同じようなことが起こります。

そもそも、薬を飲まないと痛みが強いわけですので、薬を飲んだか飲まないかは数値に大きな影響を及ぼします。

おそらく、当初の検査数値では、後遺障害は認定されなかったのではないか、あるいは12級ではなく、神経症状として14級が認定されていたのではないかと思います。

4 まとめ

このように、交通事故の被害者の方が、適切な後遺障害の認定を受けるためには、検査やその方法やシチュエーションに関する知識も必要ですあり、後遺障害の申請には、やはり、弁護士のアドバイスが重要です。

上山法律事務所では、後遺障害診断書の内容や医師との関わり方から含めてアドバイスをしています。

お困りの方は、是非、経験豊富な上山法律事務所にご相談ください。

高次脳機能障害の後遺障害申請②

2023-09-29

1 はじめに(高次脳機能障害の後遺障害申請)

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償金を獲得するために努めるのが一般的です。

事故に遭われた方が、高次脳機能障害と診断された場合、症状は重く、通院期間も長くなります。

このホームページにおいても、高次脳機能障害の一般論については、以下に記載しています。

また、コラムの中でも、以下のページに当事務所で扱った事例を掲載しています。

今回のコラムでは、最近取り扱った事例をご報告致します。

2 後遺障害申請に必要な書類

高次脳機能障害の申請に必要な書類のうちの一つとして、日常生活状況報告書というものがあります。

これは、基本的には同居している家族に書いてもらうことが多いと思います。

交通事故の被害者の方の事故からの状況変化を、一番に把握していると思われるからです。

では、一人暮らしの方の場合や、ご家族に協力を求めることができない方の場合は、どうなるでしょうか。

その場合には、一番、接触頻度の高い方にお願いすることになると思います。

例えば、事故後に仕事復帰している方の場合には、職場の同僚や上司等にお願いすることになると思います。

同居している家族の方に比べると、分からない部分も出てきてしまうかもしれませんが、可能な限り詳細に記載をお願いすべきです。

症状の変化については、主治医の意見書もありますので、後遺障害認定に当たっては、それらも総合的に評価されることになります。

3 まとめ

上山法律事務所では、高次脳機能障害の取り扱い実績も多数あります。

高次脳機能障害その他後遺障害の等級申請等でお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

可動域制限の数値

2023-07-27

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。

例えば、交通事故によって生じた怪我により、上肢あるいは下肢に可動域制限が残った場合、後遺障害の申請を行うことを検討することになると思います。

2 可動域制限

以下の投稿でもご紹介している通り、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている場合には9級、3/4以下に制限されている場合には12級といった形で、後遺障害等級が認定されます。

しかし、実際に、主治医から後遺障害診断書を作成してもらった結果、診断書内の数値を見ただけでは、よくわからないことがあります。

例えば、角度の計測は5°単位となっていますが、そうでないものもあります。

左右いずれも骨折等の傷害を負った場合には、正常値との比較で検討することもあると思いますが、片方のみの場合には、主治医がどうしてそのような数値になったのか、起点をどうしているのか等も確認しなければならないこともあります。

また、リハビリ前と後でも、数値は違ってくると思います。

以前、以下の投稿でも記載していますので、ご参照ください。

いずれにしても、後遺障害診断書が作成されたら、一度、数字をきちんと確認し、分からない場合には主治医に確認する必要があります。

3 まとめ

以上見たように、上山法律事務所では多くの後遺障害申請に関与し、また、後遺障害の申請に当たり、的確なアドバイスができるよう努力しております。

お困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

既存障害がある場合

2023-06-30

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。

示談交渉は、損害が確定した後に行うのが一般的であり、お怪我を負われて後遺障害が残存した場合には、後遺障害の申請を行った後に、示談交渉を行うことになります。

例えば、後遺障害の申請を行う際、従前にも交通事故に遭い、後遺障害の認定がなされている場合には、どうなるのでしょうか。

2 基本的な考え方

自賠法施行令は、「既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによって同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあつた後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。」と定めています。

既存障害のある方が、今回の交通事故によって同一部位に後遺障害が残った場合は、既存障害の程度を加重した場合に限って、加重した部分(「加重障害」といいます。)についてのみ自賠責保険金を支払うという意味です。

例えば、既存障害として頚部に14級の障害を負っていた方が、今回の交通事故によって、同様に頚部12級の障害を負った場合、今回の後遺障害12級の自賠責保険金から既存障害の14級の自賠責保険金を差し引いた額が支払われることになります。

しかし、裁判所は、自賠責保険における認定を重視しつつも、独自に、既存障害の有無や程度を踏まえて判断します。

例えば、14級相当の神経症状は、労働能力喪失期間が5年、12級相当の神経症状は同じく10年とされています。

そのため、既存障害が発生した時期から今回の交通事故までに上記期間が経過している場合、既存障害はすでに治癒しているとして、今回の後遺障害への影響はないという主張も十分に成り立ちます。

現に、私どもは、裁判でそのような内容の和解を勝ち取ったこともあります。

一般論として、自賠責よりも裁判所の方が柔軟だと言う意見もあります。

3 まとめ

以上見たように、既存障害のあるケースの場合は、それを前提とするか、あるいは無関係として交渉すべきなのか、非常に判断が難しいケースが多いです。

お困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

後遺障害の申請のための治療継続

2023-06-23

1 はじめに
交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。
交通事故によってお怪我を負った場合、後遺障害が残存すれば、後遺障害の認定結果が出てから、後遺障害が残存しなくても、いわゆる症状固定により通院が終了してから、損害を確定させて示談交渉に入ります。
つまり、後遺障害が残存していると考える場合には、その申請を行う必要があります。

2 通院期間はどの程度必要と言われているか
一番典型的なむちうち症状(14級を狙う場合)を例にとってお話をすると、概ね、事故から3か月~6か月くらいが通院期間とされています。
後遺障害の認定のためには、6か月程度の通院期間が必要とされています。
そのため、保険会社が3か月とか、6か月を経過する前に治療費を打ち切ると言ってきた場合には、健康保険に切り替えて、3割を自費で負担して通院を継続する必要があります。
しかし、ここで、問題が生じることがあります。

3 医師側とコミュニケーションがとりにくい場合
主治医が、後遺障害の申請の実務に慣れていなかったり、むちうち診療に好意的でない場合があります。
例えば、保険会社が治療費を打ち切った場合、その時点が症状固定だと考えている医師がいます。症状固定かどうかは、保険会社が決めるのではなく、医学的な立場から医師が判断すべき事柄です。私どもが依頼を受けた案件では、打ち切り後に数か月、自費で治療を継続して後遺障害診断書を作成してもらった際に、保険会社が治療費を打ち切った時点を症状固定だと判断を変えない医師がいました(そうであるなら、何故、継続して治療をするのか分かりませんし、その依頼者の事案では、保険会社が治療費を打ち切った後に、治療方針を変更したという案件でした)。
症状固定の時期により、請求できる治療費や慰謝料の額に影響があります。

もっとひどいケースでは、むちうち診療に好意的でなく、「うちの病院はむちうちは3か月で治療が終了します」等といい、明らかに依頼者が治療の継続を希望しており、保険会社もまだ数か月間、治療を継続しても構わないと言ってるにもかかわらず、医師の方が治療を中止するということもあります。
このような場合には、早めに転院をすることをお勧めします。
結果、その医師に後遺障害診断書の作成をお願いしても、どのような内容になるかは想像がつくからです。

後遺障害診断書の自覚症状の欄を白紙で作成するという医師にも会ったことがあります。他覚的所見欄以外は、単なる患者の主訴であり意味がないという考えのようです。
しかし、むちうちでは、自覚症状の一貫性が重要であることもあります。

4 まとめ
以上見たように、後遺障害の申請に当たり、通院期間・経過は重要です。
しかし、病院の側とのコミュニケーションが取れない場合にもあります。
そのような状況の中でも、何とか最善策を見つけないといけません。
お困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

後遺障害結果に不満がある場合

2023-06-09

1 はじめに

交通事故の被害に遭われた方は、相手方の保険会社と示談交渉を行い、適切な賠償を受けることを目指すというのが一般的です。

示談交渉は、損害が確定した後に行うのが一般的であり、お怪我を負われて後遺障害が残存した場合には、後遺障害の申請を行った後に、示談交渉を行うことになります。

後遺障害の申請を行い、納得の行く結果を得られた場合には問題はありませんが、不満のある場合には、不服申し立ての手続きがあります。

2 後遺障害結果に不満な場合の手続き

① 調査事務所に異議申し立てを行う方法

まず、認定結果に不満な場合には、認定結果を出した自賠責調査事務所(以下、「調査事務所」といいます。)に不服申し立てを行うという方法があります。

これは、時効期間内であれば、何度でも可能ですが、認定結果を覆すには、新たな証拠資料等が必要になるのが一般的です。

② 紛争処理機構に調停を申し立てる方法

次に、一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構(以下、「紛争処理機構」といいます。)に調停の申し立てを行う方法があります。

紛争これは、一度きりしか使うことができないため、この結果にも不満が残った場合には、裁判の中で主張するしかなくなります。

ただ、当事務所の感覚では、補充的に新たな証拠資料等を揃えなくても、認定結果が覆ったケースもあり、調査事務所への異議申し立てよりも認められやすい印象です。

現実問題としては、異議申し立ては何度でも可能ということであっても、複数行うということは無いと思いますので、1度だけ行うということであれば、当事務所では紛争処理機構をおすすめすることも多くあります。

③ 訴訟で争う方法

異議申し立て(①)、調停申し立て(②)以外では、訴訟で争う方法があります。

ただ、裁判所は、調査事務所や紛争処理機構の後遺障害認定結果を、一応、尊重する姿勢でいることが多く、訴訟の中で覆すには相当な努力が必要となります。

3 まとめ

以上見たように、後遺障害結果に不満がある場合に、不服申し立てを行う方法は複数あります。

上山法律事務所では、当初の後遺障害結果を覆した事例も数多く担当しています。

お困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

可動域制限と測定方法

2022-12-28

1 はじめに

前回と同様、今回も、後遺障害申請についてお話します。

おさらいですが、交通事故の被害者の方が、後遺障害の申請に当たっては、相当程度の通院を継続し、症状固定となった後に、主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。その後、調査事務所で判断がなされます。

労災の場合と異なり、一部を除いて面談等が実施されることはありませんので、交通事故の場合には、この後遺障害診断書の内容が重要であることは、このコラムの中でも何度もお伝えしてきました。

2 可動域制限

交通事故の被害に遭われた方の中でも、むちうちと並んで多く見受けるのが、整形外科領域の可動域制限です。

特に骨折された方の場合、この可動域制限が一番と言っていいほど問題となると思います。

さて、この可動域制限ですが、正常値と比較して、どの程度、可動域が制限されたのか、多動値ないし自動値という数値を基に評価されます。

自動値は、対象者が、自力で関節を動かした場合の可動域のことをいいます。

他動値は、他人(主治医など)が、手を添えて関節を動かした場合のことを言います。

関節可動域の測定について、自動値と他動値の違いは、要は、自力で動かすか他人が動かすかという違いになります。

そして、関節可動域の測定は、後遺障害診断をするにあたっては、原則として他動値で判断することになります。

どのくらい可動域が制限されると何級と評価されるのかは、以下のページで明記しています。

4分の1制限されると12級

2分の1制限されると10級

というのが割合としては多い印象です。

3 測定方法

以上は、これまでの基礎知識をまとめました。

本日は、この後遺障害診断書を作成してもらうに当たって、注意が必要なケースを紹介します。

これまでお読みいただいた方には分かると思いますが、重要なのは後遺障害診断書にどのような数値が記載されているかです。

測定方法等が問題となります。

他動値の測り方について、測定する医師によっても、どこまで力を入れて測るかといった違いはあると思います。

それよりも重要なのは、どのようなシチュエーションで測るかです。

もちろん、これは、日常生活において、どの程度、可動域が制限されているかを測るものであるため、リハビリ治療等を受けていない、いわば「素」の状態の可動域が測られていなければなりません。

しかし、中には、リハビリ治療を受けた直後に、可動域の測定がされているケースもあります。これですと、交通事故の被害に遭われた方は、リハビリを受けて、筋肉の硬さもほぐれている状態で測定されていることになりますから、「素」の状態よりも可動域制限は緩和されている状態であると思います。

後遺障害の認定がなされるか、あるいは、より上位の認定がなされるか微妙なケースでは、このように、どのようなシチュエーションで測定されているかによって結論が変わってくる可能性があります。

最近、当事務所で依頼を受けたケースでは、上記のようにリハビリを受けた後に測定されていることから、「素」の状態より良い検査数値が出ていました。しかし、打ち合わせて事情をお聞きしたら、本来はもっと状態は悪いということでしたので、再度、リハビリをする前の状態で検査をしてもらいました。

おそらく、当初の検査数値では、後遺障害は認定されなかったのではないか、あるいは12級ではなく、神経症状として14級が認定されていたのではないかと思います。

4 まとめ

このように、交通事故の被害者の方が、適切な後遺障害の認定を受けるためには、相手方保険会社からの指示に従って主治医に診断書を作成してもらうだけでは不十分です。

特に可動域制限であれば、どのような測定方法で、どのような数値が出ているのか、あるいは、その可動域制限が生じた原因は何かまで掘り下げて検討する必要があります。

後遺障害の申請には、弁護士のアドバイスが重要です。

お困りの方は、是非、経験豊富な上山法律事務所にご相談ください。

通院に空白期間がある場合の後遺障害申請

2022-12-21

1 はじめに

交通事故の被害者の方が、後遺障害の申請に当たっては、相当程度の通院を継続し、症状固定となった後に、主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。その後、調査事務所で判断がなされます。

労災の場合と異なり、一部を除いて面談等が実施されることはありませんので、交通事故の場合には、この後遺障害診断書の内容が重要であることは、このコラムの中でも何度もお伝えしてきました。

本日は、この後遺障害診断書を作成してもらい当たって、注意が必要なケースを紹介します。

2 整骨院治療がほとんどの場合

交通事故の被害に遭われた方の中には、日中に整形外科に通院できる時間的な余裕がなく、整骨院治療をメインにされている方もたくさんいらっしゃると思います。

整骨院治療については、保険会社の打ち切りが早いことや、後から治療費の相当性等が争われる可能性があることは、これまでコラムに記載してきました。

しかし、もう1点重要なこととして、後遺障害診断書を主治医に作成してもらう際のことがあります。

もちろん、整骨院では、後遺障害診断書を作成してもらえることはありませんし、基本的には、整形外科の主治医と整骨院が、患者の症状を密に共有しているということも無いと思います。

そのため、あまりに整形外科への通院に感覚が空いていると、主治医に後遺障害診断書の作成をお願いした際に、作成を渋られたり、詳細な内容の後遺障害診断書を作成してもらえない可能性があります。

このようなリスクもあるので、定期的な整形外科への通院は重要な問題です。

3 診療科目が異なる病院に通院している場合

また、事故により、複数の部位に傷害を負うということもあると思います。

例えば、骨折は整形外科、頭部は脳神経外科、肺は呼吸器外科といった形で、診療科目毎に分かれて診察を受けている場合、複数の病院に通院されているというころが起こります。

この場合、特定の診療科目については、長期間通院しないまま症状固定になるということもあります。

当事務所で最近担当したケースでは、事故直後は総合病院で、骨折や肺について診察を受けていたが、退院後は骨折の予後やリハビリを別の整形外科の病院に通院して行っていたということがありました。

しかし、依頼者の方は、肺についても強い違和感をお持ちでした。

骨折について症状固定になった後、現在通院していた病院に全体の後遺障害診断書の作成を依頼しましたが、肺については専門外ということで、当初の総合病院に依頼することを勧められました。

ただ、総合病院については長く通院をしていなかったため、肺だけの後遺障害診断書の作成を依頼しても、経緯が分からなかったと思われます。

そのため、当事務所の弁護士が同席させていただき、医師に経緯や事情を説明の上、再度の検査を実施してもらい、後遺障害診断書を作成してもらいました。

結果として、肺の部位の後遺障害が上位等級となって後遺障害が認定されました。

もし、弁護士に依頼していなかった場合、整形外科に肺に関する後遺障害診断書の作成を断られた場合、総合病院で改めて取り付けることを諦めてしまったかもしれませんし、総合病院に上手く経緯を伝えられなかったものと思います。

4 まとめ

以上のように、交通事故の被害者の方にとって、後遺障害診断書は、後遺障害認定にとって非常に重要な意味を持ちます。

依頼をされる医師の側にも、経験の差がありますし(医師としての診察の経験ではなく、交通事故の後遺障害診断書の作成においてという意味です)、空白のあるケースでは、弁護士が間に入ることでスムーズに行くことがあります。

交通事故の被害に遭われ、後遺障害申請を検討されている方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

むちうち以外でも14級9号

2022-10-07

1 14級9号とは

交通事故の被害に遭われ、後遺症に悩んでいる方も多いと思います。

後遺障害は1級から14級の14等級に分かれています。

このうち、14級9号ですが、基準としては、「局部に神経症状を残すもの」という要件になっています。

典型的には、むちうち症が有名です。むちうち症の場合、神経根の圧迫が画像上明確ではない場合には、14級9号か非該当と判断されることになります。

さて、この14級9号ですが、活躍の場面は非常に多いです。

整形外科領域での説明がつかないケースであっても、症状が継続して残存している場合には、14級9号(場合によっては12級13号)が認定されることがあります。

2 可動域制限の場合

例えば、交通事故によって上肢や下肢を骨折し、これにより可動域に制限が生じた場合、健康な側と比較して4分の3に制限されたときは、12級6号あるいは7号が認定されます。同じく2分の1に制限された場合、10級10号あるいは11号が認定されます。この可動域の制限は、可動域に制限がかかった部位に、器質的損傷(身体の組織そのものに生じた損傷のこと)が見られる場合に認定されます。

逆に言えば、可動域の制限が、これ以外の原因で生じた場合には整形外科領域の12級6号ないし7号あるいは、10級10号ないし11号の後遺障害とは認められません。

交通事故により生じた痛みから、関節が拘縮して可動域が制限されたといったケースが典型的です。この場合には、可動域の制限が、健康な側と比較して4分の3や2分の1に制限されたとしても、それは神経の症状として判断されることになります。

実はこの差は大きいです。

特に、逸失利益の算定に大きな違いが出ます。

例えば、整形外科領域の12級6号あるいは7号の場合、67歳まで就労可能という計算で算出することが多いのですが、神経症状として把握された場合、12級13号だと10年、14級9号だと5年という形で制限される可能性があります。若い方の場合、非常に大きな額の差が出ることになります。

そのため、可動域の制限が認められるケースの場合、その原因とった部位に器質的損傷が無いか、医師の画像の読影によっても結論が左右される可能性があるため、慎重に検討する必要があります。

実際に、当事務所で担当した事案ですが、最初の後遺障害認定では非該当とされましたが、医師の読影に関する意見書を添付して異議申し立てをしたところ、12級6号が認定されたケースもあります。

3 可動域制限が無い場合

逆に、骨折したけれども、経過が良好で、可動域の制限等、整形外科の領域では特段の後遺障害が残存していないケースもあります。若い方の場合、治りも良いため、決して珍しくはないと思います。

このようなケースでも、例えば、しびれが残って長時間同じ動作ができないといった自覚症状は残っていることもあると思います。

こうしたケースでも、諦めないことが重要です。

冒頭で記載したように、14級9号に認定される余地は残っています。

そのためには、後遺障害診断書に自覚症状を詳細に記載してもらい、骨折等の器質的損傷と結び付けた主張を行う必要があります。

自覚症状のみというケースは難しいのですが、当事務所で担当した事案の中でも、最初の後遺障害認定では非該当とされても、異議申し立てや紛争処理機構に調停申し立てをした場合に、14級9号が認められたケースも経験しています。

したがって、骨折を負うくらいの事故だった場合には、整形外科領域に後遺障害が残存していなかったとしても、諦めず後遺障害申請の途を検討した方がよいケースも多々あるものと思われます。

後遺障害の申請でお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

高次脳機能障害の後遺障害申請

2022-09-22

1 はじめに

交通事故の被害者向けに、高次脳機能障害の一般的な知識は、当HPのhttps://kagoshima-koutsujiko.com/koujinou/で記載した通りです。

自賠責でも、労災保険の基準も参考にして判断されていますが、もし、交通事故の被害に遭われ、ご本人やご家族の方が高次脳機能障害と診断された場合、実際に後遺障害等級が何級くらいになりそうか微妙なケースもあると思います。

今回は、実際に当事務所がご依頼をいただいたケースを基に、後遺障害申請や異議申し立てについてご説明しています。

2 後遺障害申請

大前提として、高次脳機能障害の後遺障害認定を得るためには、以下の3つの要件を満たしている必要があります。

①脳損傷が確認できること

②事故後に意識障害があること

③認知障害、行動障害、人格変化の症状があること

①については、CTやMRIといった画像検査

②については「頭部外傷後の意識障害についての所見」

で証明していきます。

ここまでは、当HPのhttps://kagoshima-koutsujiko.com/koujinou/でも記載した通りです。

高次脳機能障害の程度を見極める上では、③が重要です。

③については、主に家族や介護者に「日常生活状況報告」という書面を作成してもらうことになります。学童・学生の場合には、「学校生活の状況報告」という書面もあります。

しかし、これだけでは書ききれないエピソードといったものもたくさんあると思います。

その場合には、別途、任意の書式で構いませんが、「陳述書」といった形で、家族や介護者の方で言いたいことをさらに追加・整理したりする方法があります。陳述書の作成を職場の同僚などにお願いすることもあります。

3 当事務所の担当した事例

当事務所で担当した事例では、当初、高次脳機能障害3級と認定された事案がありました。

既に、CTやMRIといった画像、「頭部外傷後の意識障害についての所見」、ご家族の方が作成した詳細な「日常生活状況報告」を提出していました。

しかし、自賠責には、依頼者の状況を十分に理解してもらえませんでした。

そこで、異議申し立てを行いました。

2級と3級との間には、大きな違いがあります。

例えば、損害賠償の領域では、将来の介護費用が原則として認められるとされているか否かの違いがあります。3級以下の等級であっても事案によって認められているケースはありますが、2級だと原則として認められるという前提になっています。この損害項目だけでも、請求する損害賠償額が大きく異なっています。

また、被害者の方の生活状況という観点で見たときには、労災の基準の「補足的な考え方」の欄をご覧いただければ分かるように、2級の場合、「一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている」という記載があります。

当事務所で担当していた事案では、被害者の方は、一人で外出することができるような状況ではなく、認知障害も進んでおり、排泄も思うようにできないような容態でした。

そこで、具体的にイメージがしやすいように、ご家族の方に動画や写真を撮影してもらい、その状況を陳述書で補足的に説明することによって明らかにしたというケースがあります。

4 まとめ

自賠責の場合、労災と異なり、面談なしでの書面審査になります。

そのため、どうしても、書面ではイメージが付かないこともあると思います。

当事務所では、上記のように動画を提出することによって、具体的に依頼者の方のイメージを掴んでもらう工夫をしました。

判断するサイドの方々は、ご家族と一緒に住んでいるわけでもなく、また、学校や職場等で

顔を合わせたりするわけでもありません。そのため、日常生活の状況をどう理解してもらうのか、自賠責が用意している書式で、本当に被害者の方の状況を正しく伝えることができているのかというのを、しっかり考える必要があると思います。

工夫の仕方は、上記のような動画に限られないと思いますが、事案に応じた最善策を検討することが重要です。

高次脳機能障害は、1,2,3,5,7,9級と、障害等級も重いものです。その上、3級までは、2級刻みになっているため、適切に障害の程度を把握してもらい、等級に反映させることができなければ、請求できる損害賠償額に大きな違いが生じます。

高次脳機能障害その他後遺障害の等級申請等でお困りの方は、是非、上山法律事務所にご相談ください。

« Older Entries

keyboard_arrow_up

0992277711 問い合わせバナー 無料法律相談について